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詩・小説

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思いついた言葉の倉庫です。 たまに深夜のテンションで小説も書きます。
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#オリジナル

【短編小説】ブラックホール病

ねぇパパ 「ねぇパパ、私はいつまでここにいなくちゃいけなの?」 娘のシルビアが曇りガラスの向こうに何か絵を描きながら言った。 「そうだね、もう少し、かな」 「もう少し?もう少しってどのくらい?」 屈託のない目でこちらを見てきた娘を見て唇を噛み締めた。 「そうだな…」 考えるふりをして下を向いた。いろんな感情が私を襲ってきたのを娘に悟られたくなかった。 「ねぇパパ!」私に考えがあると言わんばかりにシルビアが声を上げた。 「パパのいた場所で一緒に暮らせばいいんじゃない?」 「パ

【短編小説】その日には咲かない気持ちに水をやる。

随分前からこの気持ちに嫌気が差していた。 誰かと話していても、ひとりの時もモヤモヤとしはじめるのはどうしてなんだろうか?きっと長い間私の中に溜まってしまった結果だと思う。 「ミサキさんは少し自分の気持ちを伝えるのが苦手のようです」 そう通信簿に書かれていたのを見た母はどうしてかしらねぇ?と首を傾げていた。 私は素知らぬ顔をして絵を描き始める。 季節はまだ肌寒い春のことだった。 それからしばらくして学校で友達ができた。名前はミサトといい、私の席の後ろの子だった。名前の響きが同

♡が足りない!【オリジナル曲】

それなしじゃ生きれない 限界のpoison 憂鬱な月曜日にフラッシュライトを焚いて 合図を送るよSOS 君なしじゃ生きれない 既読のつかないLINE 暇なわけじゃないのにずっと画面をいじってる 放り出したいTuesday 部屋の隅に転がるイヤホン 無くしたはずのあのドアのkey one more time 転がって 有限の♡消費して ショーを見して 疲れた体に鞭打って 遊びつくすには時間が足りない! 夢なしじゃ生きれない 正解のanswer 来週の半ばくらいに語り合お

この時代

愛想笑いが上手でうまいこと人生を綱渡り って可哀想に承認欲求だけは満たされない 「あの子より私が可愛いのに」 綺麗事で感情のお掃除  その分のお金を稼いで 時間も愛情も物足りない あのカルト集団に貢ぎましょう クソが どうやったってドロ沼の人生 待って どうせみんなゴールは同じか 泣いてもいいでしょう? 笑ってもいいでしょう? 誰かのスマホの画面に収まったとしても 許せないでしょう? 許せないなら あなたの言葉を紡いだ あなたでいてよ そのお薬を飲んでも 痛みは最高潮のまま 弱音なんてみんな聞き飽きているの 「あなただけ辛いわけじゃないのよ」 地獄の道に先立って行くのは善いことを押し付けられる人 それで空っぽになった心に全体重をロープで括って 切な どうやってたらもがかなくて済むの? 待って どうやったって痛みは感じるの 泣いてもいいなら 笑ってもいいなら 誰かのスマホの画面に収まってもいいよ だって許せないでしょう? 許せないんだよ あなたの言葉を紡いだ あなたを返して あなたの言葉を紡いだ あなたがいいから 愛想笑いが下手になった理由は必要ないでしょ って自己肯定感を高めて嘘つく画面の向こう側