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詩・小説

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思いついた言葉の倉庫です。 たまに深夜のテンションで小説も書きます。
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【短編小説】ブラックホール病

ねぇパパ 「ねぇパパ、私はいつまでここにいなくちゃいけなの?」 娘のシルビアが曇りガラスの向こうに何か絵を描きながら言った。 「そうだね、もう少し、かな」 「もう少し?もう少しってどのくらい?」 屈託のない目でこちらを見てきた娘を見て唇を噛み締めた。 「そうだな…」 考えるふりをして下を向いた。いろんな感情が私を襲ってきたのを娘に悟られたくなかった。 「ねぇパパ!」私に考えがあると言わんばかりにシルビアが声を上げた。 「パパのいた場所で一緒に暮らせばいいんじゃない?」 「パ

廃線  その先に見えるのは いつもと同じ世界だった 忘れないように 景色を額に納めた だって この気持ちになるのは この瞬間だけだから

銀杏の葉がざわめいて 朝を迎える 代わりに無くしたものはなんだっけな? 夜のうちに支度をしなくちゃ あの青さに奪われる前に

あなたはずっと悩んでいる 同じことで 誰にも言えなくて 朝日が昇ってしまう

近づく死期に沿って生き抜く僕はハイウェイ  そばにいてほしいよ 消毒の匂いで頭がちょっと変だ  でもそばにいてほしいよ わがままかもしれないけど 眠れぬ街は叫びあって笑ってる 舞い降りた天使たちの声が合図だ

不安の渦 輝く街の明かりで 夜は隠す あなたの命 夜は隠す 全部隠す 捨て猫の声が響いている 始末のできないこの思いをひとりでも アクセルを踏み続ける 景色が霞む目の端 終わりが近づいても 鳴き声は響いている それすらも隠される 夜が包み込む

一寸も先が見えなくて暗闇が君を襲う 僕はそこに留まって君の手を引いていく もう帰ろう

テレビのニュースとかで誰かの家族が泣いていて その涙の理由は『後悔』だ 考えないように でもいずれ訪れるから 今すぐ始めなくちゃ さぁ何をしたい? この足が一歩踏み出すなら

どこかに旅に出よう 僕を知らない町で つまりは退屈とお別れしたいんだ 言い訳なんていらないよ つまりは人生を輝かせたいんだ 僕らと旅に出よう どこへ行こう?

ひとり帰る 坂の道  先生はいつも正しい人だと思ってた 赤く切れた口の中は 錆びた鉄みたい  どうすれば僕はいい子なの?