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詩・小説

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思いついた言葉の倉庫です。 たまに深夜のテンションで小説も書きます。
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#超短編小説

【短編小説】ブラックホール病

ねぇパパ 「ねぇパパ、私はいつまでここにいなくちゃいけなの?」 娘のシルビアが曇りガラスの向こうに何か絵を描きながら言った。 「そうだね、もう少し、かな」 「もう少し?もう少しってどのくらい?」 屈託のない目でこちらを見てきた娘を見て唇を噛み締めた。 「そうだな…」 考えるふりをして下を向いた。いろんな感情が私を襲ってきたのを娘に悟られたくなかった。 「ねぇパパ!」私に考えがあると言わんばかりにシルビアが声を上げた。 「パパのいた場所で一緒に暮らせばいいんじゃない?」 「パ

『絶対〇〇!っていう人は絶対信じちゃダメだよ。 絶対大丈夫!っていう人は崖の淵に立っている君の背中を押すし、 絶対ダメ!っていう人は君のアイディアを盗んで走っていくからね。 君は絶対に信じてくれないだろうけど。』

『夏の音がした。去年の終わりに願ったことを思い出しながら階段を登る。ふと、目が止まるその字には懐かしさが感じられた。震える文字で「大切な人たちが笑顔で過ごせますように」と書かれていた。胸がキュッと苦しくなったので急いで階段を登り切った。あなたは最後まで誰かの幸せを願ったんだね。』

『青空が拝めることを感謝しろよ。』 と大人になった僕が言った。 未来ではどんな空になっているの?と聞いたら 大人の僕がため息まじりに『何もない、ただの天井。』と呟いた。 景色の変わらない灰色をずっと見ることになる、と言いかけてやめた。 子供にそれを伝えるのは酷だと思ったからだ。