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詩・小説

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思いついた言葉の倉庫です。 たまに深夜のテンションで小説も書きます。
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2023年3月の記事一覧

【短編小説】ブラックホール病

ねぇパパ 「ねぇパパ、私はいつまでここにいなくちゃいけなの?」 娘のシルビアが曇りガラスの向こうに何か絵を描きながら言った。 「そうだね、もう少し、かな」 「もう少し?もう少しってどのくらい?」 屈託のない目でこちらを見てきた娘を見て唇を噛み締めた。 「そうだな…」 考えるふりをして下を向いた。いろんな感情が私を襲ってきたのを娘に悟られたくなかった。 「ねぇパパ!」私に考えがあると言わんばかりにシルビアが声を上げた。 「パパのいた場所で一緒に暮らせばいいんじゃない?」 「パ

「「ねぇ毒親って知ってる?」「何それ、薬やってる親のこと?」「違う違う、子供の毒になる親のことだよ。マジでうちの親、それかもしんないわー」不意にリュックを背負っていた左肩がズキッと痛んだ。ぎゅっと握った手を日菜に悟られないように「そうなのー?」と笑って言った。」

「その時、目の前でおとなしく座っていた爺さんが立ち上がった。「わしゃまだまだ現役じゃわい!」そう言って武装した一人に殴りかかった。爺さん渾身のパンチは見事みぞおちにヒットし相手は崩れ落ちた。それがみんなの合図になった。」

「『幸せのお裾分けよ』ってあなたは言うけど、私にとっての幸せを知りもしないのによく言えたわよね。あなたの『幸せ』は私にとっての『クソ』なの。残念だけどね。これが価値観の違いってやつかしら?」

「守秘義務って知ってますか?あなたが今話している内容は、個人の情報です。家族だから言っても大丈夫だろうなんて思っていませんよね?それによく考えてください。知りもしない家族の間で自分の情報を話されているんです。気味が悪いでしょう?」

「私はそのままでいたはずだった。でも彼女は違った。 私を見つめる目が物語っていた。あなたは変わったんだね、と。 そうわかった瞬間、涙がこぼれ落ちた。もうあの頃のような関係には戻れないんだ。 彼女の見方が変われば、彼女が見る私の存在も否応なく変わってしまうのだ。」

「『君は少し過保護になりすぎていないかい?』オオカミさんが言った。 そんなことない、あの子のためなのよ!と口には出さずに目で訴えた。 するとオオカミさんはやれやれと首を横に振り『あの子のためではなく、自分のためだろう?主役を奪うのはいけないなぁ』と言い放った。」

「手を差し出せばきっとあなたは縋り付いてくるんだろう。 そして言うのだ。どうしてもっと早く助けてくれなかったの、と。 残念ながら私はあなたを助けようなんて考えていない。 どうやってまたあなたを突き落とそうか考えているのだから。」