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もうひとりの自分 第8話
20歳になった。私が何年何月何日に生まれたか
わからない。しかし感覚でああ大人だなと思った。
私はその夜、一軒の民家になぜか知らないが放火した。
私は逃げて遠くから様子を見た。
その季節は真冬だった。乾燥してるかわからないが、
民家は瞬く間に燃え上がった。
しかし私には「何と取り返しのつかないことを
やってしまったのか?」という罪悪感が全く
なかった。そして冷静だった。
私自身身分も何もないので警察に声をかけられても
嘘の住所、年齢、氏名などしか答えない。
私は何事もなかったかのように空き家に帰り
眠りに就いた。
夢の中の私も20歳を過ぎ、無性に建物を燃やしたく
なった。
![](https://assets.st-note.com/img/1706484334051-nxLb4Vn2MY.jpg?width=800)
全然知らない土地にやってきて、全然知らない人の家の
前にやってきて何故か持っていた紙を何故か持っていた
ライターの火で燃やしそっとその家の片隅に置いた。
するとその家は瞬く間に燃え広がった。季節は冬。
あたりは乾燥していたので燃えやすいのは当然だが、
まさかこんな早くに燃え広がるとは思っていなかった。
10分もしないうちに何と20軒が炎に包まれた。
住民たちの叫びが聞こえてくる。
「か、火事だ!」
「中にお父さんがいるの!!」
怒号、号泣、サイレンの音。私もどさくさに紛れて
逃げる。しかし私の前の人が火だるまになった。
私の隣にいた親子も叫びながらひた火だるまに
なった。私以外の人たちは燃え尽きた。
私は間一髪何とか現場から逃れた。
死にたくないのと一連の大火の犯人が私であると
バレたくない一心で逃げた。
しかし現場から遠い公園で燃え上がる住宅街を
見つめるがいくら乾燥しているとはいえ、
あんなに燃えるかな?
![](https://assets.st-note.com/img/1706655054473-zoXIv08EAw.jpg?width=800)
すると誰かが私に声をかけた。
「元気よく燃えてますねえ」
「ええ。」
「やっぱり自分で燃やした町々を見つめたら圧巻
でしょうね」
「は?」
その人はかぶっていたフードを脱いだら真っ黒に
焼かれ骸骨みたいな顔の男。
「おまえも俺のような顔にしてやろうか!!」
男の口から灼熱の炎が吐かれた。
「ぎゃー!!」
目を覚ました私だったが消防車のサイレンがうるさく
鳴り響く。
隣の家が燃えていた。明るくなったときにようやく
鎮火した。すると消防団員の叫び声が聞こえた。
「おーい!!人らしきものを見つけたぞ」
多分住民だろうか。真っ黒に焼き焦げた死体が
運び出された。私は一瞬であるが衝撃を受けた。
顔は炭化して黒い頭蓋骨だったがそれは何と
夢の中で私に声をかけ勢いよく炎を吐いたその人
にそっくりだった。
私が寝ている間に火事は起きていた。しかしもっと
怖いのが。
(警察)「あのうこの火災にあった家の住民について
お聞きしたいのですが」
(住民)「ごめんなさい。私、その家に住んでた人
知らないんです。表札もないので誰で
どんな人か本当に知らないんですよ」
どの住民も私が夢に出てきた炭化の男性が何者か
がわからなかった。
第8話おわり
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