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もうひとりの自分 第8話

20歳になった。私が何年何月何日に生まれたか
わからない。しかし感覚でああ大人だなと思った。
私はその夜、一軒の民家になぜか知らないが放火した。
私は逃げて遠くから様子を見た。
その季節は真冬だった。乾燥してるかわからないが、
民家は瞬く間に燃え上がった。
しかし私には「何と取り返しのつかないことを
やってしまったのか?」という罪悪感が全く
なかった。そして冷静だった。
私自身身分も何もないので警察に声をかけられても
嘘の住所、年齢、氏名などしか答えない。
私は何事もなかったかのように空き家に帰り
眠りに就いた。

夢の中の私も20歳を過ぎ、無性に建物を燃やしたく
なった。

全然知らない土地にやってきて、全然知らない人の家の
前にやってきて何故か持っていた紙を何故か持っていた
ライターの火で燃やしそっとその家の片隅に置いた。
するとその家は瞬く間に燃え広がった。季節は冬。
あたりは乾燥していたので燃えやすいのは当然だが、
まさかこんな早くに燃え広がるとは思っていなかった。
10分もしないうちに何と20軒が炎に包まれた。
住民たちの叫びが聞こえてくる。
「か、火事だ!」
「中にお父さんがいるの!!」
怒号、号泣、サイレンの音。私もどさくさに紛れて
逃げる。しかし私の前の人が火だるまになった。
私の隣にいた親子も叫びながらひた火だるまに
なった。私以外の人たちは燃え尽きた。

私は間一髪何とか現場から逃れた。
死にたくないのと一連の大火の犯人が私であると
バレたくない一心で逃げた。

しかし現場から遠い公園で燃え上がる住宅街を
見つめるがいくら乾燥しているとはいえ、
あんなに燃えるかな?

すると誰かが私に声をかけた。
「元気よく燃えてますねえ」
「ええ。」
「やっぱり自分で燃やした町々を見つめたら圧巻
でしょうね」
「は?」
その人はかぶっていたフードを脱いだら真っ黒に
焼かれ骸骨みたいな顔の男。
「おまえも俺のような顔にしてやろうか!!」
男の口から灼熱の炎が吐かれた。

「ぎゃー!!」
目を覚ました私だったが消防車のサイレンがうるさく
鳴り響く。
隣の家が燃えていた。明るくなったときにようやく
鎮火した。すると消防団員の叫び声が聞こえた。
「おーい!!人らしきものを見つけたぞ」
多分住民だろうか。真っ黒に焼き焦げた死体が
運び出された。私は一瞬であるが衝撃を受けた。
顔は炭化して黒い頭蓋骨だったがそれは何と
夢の中で私に声をかけ勢いよく炎を吐いたその人
にそっくりだった。
私が寝ている間に火事は起きていた。しかしもっと
怖いのが。
(警察)「あのうこの火災にあった家の住民について
    お聞きしたいのですが」
(住民)「ごめんなさい。私、その家に住んでた人
    知らないんです。表札もないので誰で
    どんな人か本当に知らないんですよ」
どの住民も私が夢に出てきた炭化の男性が何者か
がわからなかった。

第8話おわり

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