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もうひとりの自分 第1話

山田利男。年齢不詳。
私は他の人とは違う人生を送っている。
私は5歳のときに住んでいる家を見て

「あぁ。このままここに住み続けたらいいことないな。」
と思い、いつかのために独り立ちの練習を始めた。

ダンボールとガムテープを持ち、庭で家を作った。

しかし翌日雨でダンボールが濡れて崩れて生活は
挫折した。

それでも諦めない私は独り立ちに必要なものとは何か?を考えた。だが思えば私の家は貧乏どころか生活に
必要な物という物が一切ない。
親は母しかいない。父の顔は産まれてから
見たことがない。

母は何の職業かは知らない。それどころか
母が家事をしているところさえ見たことがない。

郵便受けには大量の請求書や滞納を知らせる督促状が
大量にある。
5歳の私は学校に行ってないので何と書かれているか
知らない。
しかし5歳の私でもこう思った。

「そろそろヤバいな。この家に住めなくなる日もそう遠くないな。」

その時代はペットボトルというのが普及していないためどこで拾ったか知らない空き缶を持って近くの公園に
行き水を汲んだ。
水道ガス電気なんぞ最初からない以上そうする
しかなかった。

テレビもラジオもないので外の情報を一切知らない。
しかし勘の鋭い私には外に出て空を見てこう思う。

「いいことなんてないなこのまま。」

ある夜のことだった。
いつも使っているぼろぼろの毛布に包まれて眠りに
就いた。
外は雨がポツポツと強くも弱くもなく普通に
降っていた。

だがその日見た夢はいくら5歳の自分でも
感じるくらい不愉快なものだった。

不愉快なんだが、非常に先が気になる夢だった。

これこそ私の人生はこれからそうしようと決定づけた
「夢」だった。

第1話おわり

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