アメリカ民謡「I’VE BEEN WORKING ON THE RAILROAD」

「線路は続くよどこまでも」の原曲、アメリカ民謡「I’VE BEEN WORKING ON THE RAILROAD(ウクレレ独奏)」楽譜(TAB譜)、販売開始しました( *・ω・)ノ

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(線路は続くよどこまでもの歴史的考察)

日本の童謡としての「線路は続くよどこまでも」は、遥かな街まで僕たちの楽しい旅の夢をつないでる、というじつに、健全な良い子のための夢と希望溢れるというか、学校教育的なというか、まぁそういう歌な訳ですが。

元々のアメリカ民謡「I've been working on the railroad」のほうでは、かなり違うニュアンスが歌われています。タイトルだけ見ても、どこまでも続くのは夢を繋ぐ線路というよりも、どこまでも終わらない線路を作る仕事な訳でw、このへんからすでにブラックな香りが。

ということで、この歌は、アメリカ大陸横断鉄道建設に従事したアイルランド系移民の人たちの労働歌、というのが元々の姿です。何故大陸横断鉄道建設にアイルランド系移民が従事するのかというと、それには二つの理由があります。

ひとつはジャガイモ飢饉。これによりアイルランドの人口は2割以上減ったということですが(詳しくはググってね)、困窮した人々を安い労働力として活用しようとしたのが大陸横断鉄道建設を進めていたグローバル資本企業というわけで、まぁ現代と似たようなことを当時はもっとあからさまにやっていたということですね。

もうひとつの理由は南北戦争で、当時の北側は黒人奴隷を建前として否定していたので、黒人を建設作業員に駆り出すことが出来なかったので変わりに貧乏になってるアイルランド人を連れて来たということです。まぁ都合の良いことで。

当初は安い労働力として新大陸に渡ってきたアイルランド系移民の人たちですが、彼らには「俺たちは白人であって奴隷扱いすんな」みたいなプライドがありました。

アイルランド系移民の人たちは団結して政治力を持つようになり、あまり酷い待遇では働きたくねーと言い始めます。勿論、それは正当な要求とも言えますが、資本家側にしてみれば、労働力はコストなので、ブラックにこき使えるほうが「生産性が良い」とか考えてる訳です(このへんも現代と同じ、いや当時はもっとあからさま)。

で、どうなったかというと、資本家たちはもっと安い労働力として、中国人移民を連れて来ます。あっちが駄目ならこっちと、まぁ人を道具としてしか思ってない訳ですよこれ。

中国人移民たち「苦力」として、ブラックな待遇でもじつによく働くので、資本家には都合がとてもよく思えました。で、もう我儘なアイルランド人なんかいらねーとか言い出す始末。ほんとひでー話。

アイルランド系移民の人たちには強烈な中国人嫌悪感が生まれます。それが後にはアジア人への嫌悪感となり、その感情は日本人移民にも向けられます。その行き着く先が黄禍論となっていく訳です。

黄禍論は、政治力を持ったアイルランド系移民の人たちがメディアを動かして拡大展開されていき、アジア系移民排斥運動に繋がっていきます。

それは即ち、下層民同士を対立させて、上層民は高笑いしてる、という現代にも通づる状況だった訳です。

そんなこんなで、歴史はその後第二次世界大戦、太平洋戦争へと繋がっていく訳ですが、こういった歴史的経緯が、アメリカ社会からの日本への視点のなかに紛れていたということは、日本人の大人は知っておいたほうがいいかもしれません。

だから「線路は続くよどこまでも」を気楽に歌ってる場合じゃねーなんて言うつもりは無いのですが(気楽に歌って良いと思います)、上層民と下層民がいる社会構造てのは、今も昔もそんなに変わらないよなぁとかは少し感じて欲しいかなとは思います。

ちなみにこの曲、作曲技法的にはじつにまとまりのない、なんだかよくわからない形式になっています。

この曲は誰かが作った歌ということではなく、労働歌としてはありがちなのですが、いろんな歌のパーツを継ぎ接ぎで適当に歌い継がれてきて、だんだんこうなってきた、という感じのようです。

でんでんむしむしかたつむりんごはまっかっかあさんはよなべをして~みたいな状態と言えばわかるでしょうか?(笑)

歌詞の内容も、一番はダイナというのが汽車の名前なのに、二番以降はダイナというのが女性の名前として歌われます。で、二番でダイナは誰かと音楽を奏でてるんだけど、三番ではダイナはその誰かと浮気してる?みたいな支離滅裂ぶり。

まぁじつに大衆歌という感じですね。

ということで、世界史好きとしてはジャガイモ飢饉とか南北戦争とかいろいろもっと語りたいところですが、このへんにしておきます。


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