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大糸北線に関する個人的な考察、或いは戯言

皆様こんにちは、ジョーエツクアッカです。

さて、皆様は「大糸線」というものをご存じでしょうか?長野県松本駅から新潟県糸魚川駅までを結ぶJRのローカル路線です。路線名の由来は信濃「大」町と「糸」魚川を結ぶから。姫川ラインと北部信州地域の美しい風景が魅力で、旅をするにもってこいの路線と言えるでしょう。

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この大糸線ですが、松本~南小谷(長野県)はJR東日本、南小谷~糸魚川はJR西日本が管轄しており、それぞれ大糸南線、大糸北線と呼ばれたりしています。何故南小谷で分割されているのか?これは、国鉄時代に、南小谷以南が国鉄長野鉄道管理局、以北が金沢鉄道管理局の管轄にされたからなんだとか。特に大糸北線は新潟・長野地域に存在する唯一のJR西日本路線にして、最東の路線となっています。

さて、前置きが長くなってしまいました。今回のメインはこのうちの「大糸北線」についてです。実はこの大糸北線について、先月、あるニュースが流れました。それが「大糸線 一部廃止も議論へ」というものです。
これに対し、多くの鉄道ファン・マニア・有識者が様々な記事や動画を作成しました。当然といえば当然です。なにせ、日本屈指の絶景ローカル線が無くなるかもしれないのですから。なんとか存続できないものか、もう無理なのか……、様々な意見が飛び交っております。
さて、新潟も塒の一つとするこの私も、当然このニュースには思うところがあるもので、いったいどうなるのだろうかと、足りない頭を捻っておりました。ということで、その足りない頭で考えたことを、ここで軽く書いてみようかと思います。もちろん、今後どうなるかはJR西日本の、或いは新潟県のみぞ知るところ。こんな駄文一つで何か変わるとは思ってはいません。しかしながら、私も所縁がある地の鉄道が一つ消えようとしている。せっかく自分の意見を発信できるツールがあるのだから、考えの一つでも書き連ねておこうというものです。

前置きが長くなってしまいました。(2度目)
今回は大糸北線について、「廃線」「JR西日本のまま維持」「JR東日本への移管」「新設第三セクターの設立・県による管理」「えちごトキめき鉄道への譲渡」という5つの点から考えてみようと思います。なお、素人故に間違いなども多いかと思います。あらかじめご了承ください。(ここから、書きやすさを考えて少し語調が変わります。申し訳ありません。)

廃線

さて、まずは「廃線」について。正直なところ、可能性はかなり高いと考えている。これは2016年のデータではあるが、東洋経済オンラインによれば、大糸北線の1日当たりの平均通過数量である輸送密度は「100」、100円の収入のために係る費用を表した営業係数は「6490.0」(=つまり、100円手に入れるのにおおよそ6500円弱かかるのである)。この数値はJR西日本管内で見ても最悪レベルといえる。他の路線の営業係数を例に挙げると、大阪環状線は「68.1」、北陸福井のローカル線である越美北線でさえ「2791.8」である。もちろん、山陰の山奥を走る芸備線の最過疎区間における輸送密度「9」、営業係数「106,801.9」等も存在するが、路線全体を通じて、これほど低い輸送密度・営業係数の路線は、他に類を見ない。
この理由としては、沿線人口の少なさ・路線の悪さが考えられる。
まず、沿線人口について考えてみるが、そもそもこの路線の沿線には都市と呼べる街がない。強いて言えば、北陸新幹線の駅が存在する糸魚川市があるが、令和4年3月1日現在で人口は40,375人である。これは新潟県内でみても多いとは言い難い。お隣の上越市は186,630人、雪深い十日町市も50,078人である。より詳しくは、有名YouTuberの方々が検討しているので割愛するが、少なくとも、鉄道が生き残るには厳しい環境であるといえるだろう。
これに追い打ちをかけるが如く存在する問題が、大糸線の路線の悪さである。国鉄時代の線路等級で見た場合、大糸北線の線路等級は簡易線扱いである。詳しくは省くが、これについては線形が悪く制限速度が低いと理解すれば十分であろう。これに加え、非電化・単線にして、徐行区間も存在する。これではあまりに所要時間がかかりすぎる。現に南小谷~糸魚川35.3kmに係る所要時間はおおよそ1時間2~4分。北陸新幹線に乗れば糸魚川から金沢・長野・上田に到着してしまう時間である。そして、現在、糸魚川~松本においては高規格道路である「松本糸魚川連絡道路(=通称:松糸道路)」が建設中である。鉄道の優位性である速達輸送という点は見る影もない。
大量輸送能力を発揮するだけの需要もなく、速達輸送も叶わない。
以上のことを考えると、廃線という結論が出ても、仕方のないことである、と言えてしまうだろう。

JR西日本のまま維持

次に「JR西日本のまま維持」、言い換えれば、現状維持について考える。これについては、糸魚川市・新潟県との話がこじれたり面倒なことになったり等というステップが続けば、可能性として無くは無い、かもしれない。しかしながら、これは問題解決の先送りにすぎない。今回は廃線を免れても、その先は真っ暗だ。
そもそも、北陸本線がえちごトキめき鉄道に移管されたために、大糸北線というのはいわば「飛び地」となってしまっている。これは人員や車両の配置を考えたうえで非効率的である。加えて、上記の営業成績である。営利企業であるJR西日本のことを考えれば、さっさと切ってしまいたいという気持ちはわからなくはない。
以上のことを考えれば、JR西日本が維持するというのは、(大糸北線の輸送量が劇的に改善でもしない限り)今後のことを考えた場合、可能性は極めて低いといえるだろう。
なお、所謂上下分離方式にJR西日本が一枚噛む場合については後述する。

JR東日本への移管

さて、「JR東日本への譲渡」である。これは、大糸南線を有するJR東日本に大糸北線を譲渡し、大糸線全線をJR東日本の路線とするものである。これにより、大糸線全線を通した運用や、大糸南線のような電化・中央線特急「あずさ」の糸魚川延長運転が望める、という意見が存在する。
これについては、個人的には可能性が低いと考えている。それは、JR東日本が大糸北線を有することにより得られるメリットが小さいからである。
大糸北線の営業成績は上記の通りであり、少なくともJR西日本にとってはお荷物と言っても差し支えないレベルである。そんな路線を、同じく営利企業であるJR東日本が欲しがるだろうか。確かに、JR東日本に移管すれば、人員・車両の運用を考えた際に、多少、労力は減少するかもしれない。しかしながら、そのためにわざわざ新たに気動車を持ってくるという手間を取るだけの価値があるのだろうか。保線の手間も拡大する。電化するにしても、それだけの価値があるのだろうか。電化するのもタダではない。更に言えば、大糸南線は直流電化なのに対し、糸魚川駅は交流60Hzである。電化する際には、更に手間のかかる交直両用車両を導入するないしは糸魚川駅の電化設備に手を加える必要がある。ハッキリ言えば、かなりの費用が掛かる。そこまでのことをする価値が、果たして大糸北線に存在するのだろうか。
以上のことを考えれば、JR東日本への移管の可能性は低いといえる。可能性があるとすれば、何としても大糸北線を後世に残すために、体力が(多少は)あるJR東日本に移管するよう関係各所が考え、それにJR東日本が応えた場合くらいだろうか。(あるいは、JR東日本にとって、私の想像も及ばないような考え・利益が大糸北線に存在する場合であろう。)
というか、JR西日本が「廃止」を考えるほどである。JR東日本になったとしても、同じく「廃線」という結論に至る可能性は捨てきれない。そう考えれば、JR東日本への移管というのも考え物である。
なお、所謂上下分離方式にJR東日本が一枚噛む場合については後述する。

新設第三セクターの設立・県による管理

4つ目に考えるのが「新設第三セクターの設立・県による管理」である。これについては、「路線管理・運用の全てを行う第三セクターの新設・県による管理」と「上下分離方式の上、ないしは下を担う第三セクターの新設・県による管理」が考えられる。
このうち「路線管理・運用の全てを行う第三セクターの新設・県による管理」については、可能性は極めて低いといえるだろう。大糸北線35.3kmのためだけに新たな会社を立ち上げるのは非効率にも程がある。いわんや、この区間のためだけに県が第一種鉄道事業者免許を取得など、というものである。
上下分離方式の上、ないしは下を担う第三セクターの新設・県による管理」については、可能性としては十分に考えられると、私は考えている。これは、JR東日本只見線が先例となりえるだろう。豪雨による被害を受けていた只見線会津川口~只見については、JR東日本が第二種鉄道事業者となり運行を、福島県が第三種鉄道事業者となり施設の保有を行うものとしている。これは、今後のローカル線の在り方を考えた際に、一つのモデルケースとなりえるのではなかろうか。只見線とは異なり、大糸北線は県をまたぐことから、県による管理、よりは、新潟県・長野県が共同出資した第三セクターを新設する方が運用はやり易いだろう。例えば、JR西日本ないしは東日本、或いはえちごトキめき鉄道(以下トキ鉄と呼称)を第二種鉄道事業者とし、新設の第三セクターを第三種鉄道事業者とすれば、運行事業者の負担を減らしつつ、路線の維持が可能になると考えられる。最も、この場合にも、特にJR西日本・東日本においては車両運用・乗務員の運用において多少のロスが生じる。このロスを受け入れるだけの価値が大糸北線に存在するか、或いは、大糸北線を運行することによって得られるのか、といった点がポイントになると考えられる。

えちごトキめき鉄道への譲渡

最後に「えちごトキめき鉄道への譲渡」について考える。個人的には、これが存続の可能性としては最も高いと考えている。
トキ鉄への譲渡、について考える前に、まずトキ鉄について簡単な説明を。えちごトキめき鉄道は2015年の北陸新幹線金沢延伸に合わせて、北陸本線市振~直江津・信越本線直江津~妙高高原を運営するために設立された鉄道会社である。言ってしまえば、北陸新幹線延伸によって経営分離される新潟県上越地域の並行在来線を一手に担う鉄道会社である。このうち、日本海ひすいライン(旧北陸本線)は糸魚川駅において大糸北線と接続している。

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さて、トキ鉄への譲渡が最も可能性が高いと考える理由である。それは、車両・人員の運用を考えた場合に、トキ鉄が運営を行うというのが最も効率的であると考えるためである。現在、トキ鉄では妙高はねうまラインでET127系が、日本海ひすいラインではET122形が主として使用されている。そして重要になるのはET122形である。この車両は気動車であり、ワンマン運転に対応している。(信号設備などについてはわからないが)これは、大糸線での運用が可能であるということを示している。また、大糸北線の終点駅である糸魚川駅の在来線部分についてはトキ鉄が管理しているとともに、糸魚川駅において日本海ひすいラインから大糸北線への乗り入れが可能である。大糸北線をトキ鉄に譲渡することによって、糸魚川駅を中心とした利便性の高い運行形態の確立、或いは直江津・妙高高原、ひいては長岡・新潟地域から姫川・南小谷への直通運転が可能になるだろう。また、トキ鉄のリゾート列車である「えちごトキめきリゾート 雪月花」の定期的な入線による、観光路線としての価値の向上が見込めると考えられる。

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勿論、問題点は存在する。それは、赤字路線である大糸北線をトキ鉄に譲渡することによるトキ鉄の経営の悪化である。
そもそも、トキ鉄は同時期に三セク移管した「IRいしかわ鉄道」「あいの風とやま鉄道」と比較しても経営環境は厳しい。なにせ「いしかわ鉄道」には金沢が、「あいの風とやま鉄道」には富山という都市があるのに対し、トキ鉄の沿線最大都市は上越市であり、その他の街も糸魚川市・妙高市である。加えて交直の電流区分のためのデッドセクションも有しており、汎用車両としても2形式を有している。収入が見込みづらいわりに、費用がかかる地域なのである。
ただでさえ厳しいというのに、そこにさらに超赤字路線を加える。トキ鉄の経営に与える影響が大きいものになるということは想像に難くない。そう考えた場合、トキ鉄への譲渡を行うに際しては、大糸北線を有しても大丈夫なだけの資金を有することが必要になると考えられる。しかしながら、そんなことを待っていては大糸北線が廃線になってしまうことも考えられる。
以上のことから、運用・地域という点で考えれば、大糸北線トキ鉄譲渡の可能性は高く、有用性も十分に考えられるが、資金面で考えた際に、大きなネックが存在する、というのが結論である。

最後に

以上が、足りない頭を捻って考えた大糸北線に対する考えです。
正直これを書きたいがためにnoteを始めたようなものなので、とりあえず目的は果たしました。もう書くネタないな?(ダメじゃん)
「答え出てなくね?」「まぁ、そうですね……」
正直なところ、大糸北線を取り巻く環境は厳しいといわざるをえないでしょう。トキ鉄への譲渡が回答としては悪くないとは思いますが、最適解かと言われると……正直わかりません。
ただ一つ確かなことは、大糸北線、いえ、大糸線という路線は、安易に失うには惜しい素晴らしい路線であるということです。北部奥信州・姫川ラインが織りなす四季折々の景色は、日本という国の四季と自然の素晴らしさを私たちに教えてくれます。また、北陸新幹線・旧信越線・飯山線と共に信越連絡線としての役割は微かにでも残っています。

どうか大糸北線がこれからもあり続けんことを
どうか多くの人が大糸線を使ってくれることを

そんなことを願って、今回は終わりたいと思います。
このような駄文を、最後まで読んでいただきありがとうございました。
次のテーマは……何にしようかな

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