イトマン処理

2月6日の朝刊に、住友銀行頭取を務めた巽外夫氏が97歳で死去した記事が出た。前任の磯田一郎会長と対照的なタイプで表立ったことをしないひとだったそうだ。磯田会長に退任を迫りイトマン処理の陣頭指揮をとって住友銀行を再生させた功労者と記事を読むと、外資によくみられるような、前任者の否定の上に功を誇るようなひとに聞こえるが、そうではないようだ。経営の世界で大きな実績を残しつつ、人として大切な節度やモラルを代償にしなかった稀有な人物だった。

偶然だと思うが、同じ日の紙面に、”國重惇史の告白「堕ちたバンカー」”という本の広告が出た。國重惇史氏は巽氏とは世代が異なる。本の紹介によると平和相互銀行事件やイトマン事件を内部告発するなど、暗部に深く関わり活躍した人物だ。先に「住友銀行秘史」という本も出しており、暴露する人という印象が一番に来る。

組織人には二つのタイプがある。間違ったことに直面した時、批判して正そうとする人と自分も同罪として贖罪に取り組む人。いずれにしても綺麗事ではなく精神力が最も求められることろだろう。ただ、凡人である自分の経験から言えば、組織を愛していた時は自分も一心同体運命共同体だと疑わず、今から思えば誰の得にもならないのに自分一人被害者になり損害を抱えてしまったし、組織を憎んでいる時は、些細なことでも他人に責任を探し、自分を第三者にして解決に手を差し伸べようとはしなかった。


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