LINE Payの300億円祭りの目的とは？
5月13日にPayPayの「第2弾100億円キャンペーン」が終わるのを待っていたかのように5月20日からLINE Payがスタートした「全員にあげちゃう300億円祭り」。
とうとうLINEが本気で20％還元キャンペーンをするのか？と思ったら、「本人確認をしてくれた人に1000円を配る」というもの。PayPayの100億円の3倍の300億円ってスゴイ！っと思いきや、実はそうでも無い。1000円をもらえるのは一人1回だけなので、300億円を1000円で割ると3000万人に配るということになる。実施期間は5月20日〜5月29日の10日間。
LINEは、開始から1日で約90億円相当に達したと発表。900万人に付与したということにはなるが、1000円を受け取った人は、本人確認をしないとチャージされないので、正式には900万人が受け取ったというわけでない。私も約50人に1000円を配ってみたものの、受け取ったという連絡は1割程度しかいないので、3000万人が受領するというのは現実的では無さそうだ。最終的な数字は、「本人確認」の期日が6月30日までなので、7月以降に明らかになるだろう。
では、なぜLINEが今回のようなキャンペーンをしたのか。それは、PayPayの営業による人海戦術による加盟店の増え方が尋常ではないからだ。
観光客で賑わう金沢市の近江町市場では130店舗がPayPayを導入するなど、現金オンリーだった飲食店や商店での導入が進んでいる。
一方のLINEは加盟店の開拓は、ネットで申請を受けるという、どちらかというと受け身なスタイルを取っているので、「加盟店登録申請をする」という面倒臭さが障害となっていて、それほど加盟店は増えてないような印象を受ける。加盟店を増やすのが先か利用者を増やすのが先かという鶏と卵の話で考えると、LINEは国内7900万人のユーザーにLINE Payを使わせる作戦に出たというわけだ。
しかし、前述のようにコンビニなどのチェーン店を除くと、LINE Payを使えるお店が多くないことから、送金機能を使ってもらう作戦に出たのではないか。
QRコード決済先進国とと言えば中国で、屋台や物乞いまでQRコード決済をしているようなイメージを受けるが、実際は加盟店に対する決済機能ではなく、送金機能を使って商品などの支払いをしているお店が多いようだ。
つまり、加盟店にならなくても送金機能を使えばQRコードで代金を受け取ることができるのだ。送金用のQRコードを印刷してレジ横においておけば、事実今日のQRコード決済を導入することができるのだ。
ただ、送金機能を使った支払いが一般的になってしまうと、現在無料にしている決済手数料を3％などに戻した時に、お店での支払いに送金機能を使われてしまうと決済手数料収入が落ち込む可能性が高い。
とはいえ、既存のLINEユーザーにLINE Payを使ってもらうことを優先し、1ユーザー獲得のために1人当り1000円を使うという作戦に出たのだろう。
今回、1000円を受け取るためには、ユーザーは一つハードルを越える必要がある。それが本人確認だ。本人確認をするには、免許証などの身分証明書と自撮り写真のアップ、または銀行口座の登録のいずれかが必要だ。前者はメルペイも導入しているeKYC（Electronic Know Your Customer）の略でのことで、郵送しなくても本人確認ができる仕組み。
ちなみに、PayPayにも送金機能があるが、本人確認は不要だ。その理由は、LINE Payは資金移動業者なのに対し、PayPayは前払式手段発行業だからだ。つまり、資金移動業者は受け取った代金を現金にすることができるが、前払式手段発行業の場合は、現金にすることができないのだ。現にPayPayのアプリに「銀行口座に出金」というメニューはあるが準備中のまま。PayPayはユーザー獲得を優先するために、資金移動業者になるのをあえて先送りしているのかもしれないが。
資金移動業者一覧（平成31年4月30日現在）https://www.fsa.go.jp/menkyo/menkyoj/shikin_idou.pdf
消費者が20％キャッシュバックに慣れてしまわないか心配だ。ゆうちょPayは「デビューキャンペーン」として先着100万人に現金で500円プレゼントというキャンペーンを実施しているが、500円程度ではアプリを入れるのにはインパクトが不足しているように感じてるユーザーが多いのではないか。
ともあれ、まだまだ、各社の焦土作戦は続きそう。ユーザーは手を広げずに効率的な賢い消費行動を取る必要がありそう。意外と早い段階で淘汰されるかもしれない。
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