見出し画像

手紙(文京区行き)#1


嫌オブジェ

けんちゃんへ

ありました。この間、板橋の居酒屋で話した不快オブジェの写真。

これ、データによると2021年の11月だからなんかコロナのオミクロン株が出始まった時っぽい。結構社会的なストレスが高まり始まった時だったかな。なんだかこちらでは中央の方の右化が2021年になってひどくなりつつなったの覚えてるよ。まぁ、だから事実婚ってか州認定カップル契約を結んだわけだけど。この制度がさぁ、結構過去には無くなったりまたできたりしてた時期とかあったから、こりゃこのまま右化がひどくなって国全体がホモフォビック傾向になったら結構めんどくさいことになりかねんと二人で思って、弁護士探して手続きしたんだったよ。そんな時期だったから、わりかしリベラルなところに住んでるけど、こんなもんが突如として公共の場に現れ始まったりしたのかなぁと思った。

このオブジェ、本当に不快なんだけど、同時に本当に不快すぎて、ある種の作品としてはとても完成度が高いのではと感心しちゃったんだよね。なんでこんなに不快なのかって多分、まず自分の身体を容易にこの椅子の上に投影できるからだと思う。その上で、その自分の投影した体勢、この矢印方向、さらに陰茎の位置のせいで、見事に自分の身体がかなり猥雑な性的物体に成り下がる感があるっていうか。この後ろのバーの位置の感じとかも、本当にすごい的確な場所に置いたなと思うよ。あとなんだろ、草の上に置く感じとか。なんか性って陽気でコミカルにしようと思えばできるし、反対に地獄のデカダンスにしようと思えばできると思うんだけど、これは完全に後者。こういう体勢をとるってことはつまり相手もいるわけで、そしてこれって大学の構内の裏の駐車場なんだけど、自分も相手も半分影の公共の場で、しかも土の上で欲を貪ってる。自分も相手も救い様がない状況。そういう救い難さが全部同性愛者だからで表されている。青赤黒の配色とかも絶妙。

自己投影の図

いやぁ、本当にこれ、作った人どんな人なのか気になる。感覚で作ったなら結構感覚が鋭いと思うし、考えて作ったなら造形に対して論理的だと思う。いずれにしろかなり悪意がすごいことには変わりないんだけどさ。むしろどういうテンションで作ったんだろ。ポップな「オカマ野郎は地獄におちろ」的な便所の落書き的なテンションだったのか、もしくは本当になにか政治的信条的ななにかの背景やら感情やらを糧に作ったのか。…うーんでも、まぁ前者か。怨念のこもった作り込みは見られないしね。いやぁでも当事者の俺としては、嫌オブジェとしてクリティカルヒットだったよ。嫌さがね。

またなんかあったらお手紙書くね。
それではまた。

2023年5月26日 22時10分
2023年5月27日 05時10分 (日本時間)
あなたの友人 ナカノより


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?