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続 国鉄制定色の欠番について(整理)

前回記事はこちら↓

読者の皆さん、こんにちは。
先日、国会図書館デジタルで業界雑誌を読み漁っていた中で、こんな記事を発見しました。

国鉄では車両の多色化に対処して,車両関係色見本台帳によって,色彩の種別を管理しているが,これにはすでに廃止されたものまで含めると, 約180種類の色彩だ(原文ママ)登録されJISによる修正マンセル記号によって規定されている。また比較的使用頻度の高い色彩は,色見本帳として,関係箇所に配布し,業務に利用してもらっているが,最新の1978年版のものには,銀色を含め
約50色がおさめられている。

鉄道工場 1981年12月号 「色いろのはなし」松澤 浩(車両設計事務所・次長)
https://dl.ndl.go.jp/pid/2360110/1/3 

資料そのものについて

国鉄車両関係色見本台帳は、本社内で制定した色を一元管理するための台帳です。1958年3月24日の臨車設第389号「国鉄車両関係色見本台帳の通知について」により設置された資料であり、これ以降、本資料を準用して業務を行っていたとされています。
 星晃氏の記事「車両と色彩」(1964年4月執筆 回想の旅客車下巻に収録)、「車両塗色及び標記基準規程(全文改正以前、1978年9月末迄)」の記述などから1978年頃までの現存が確認されていましたが、今回の発見により、確定現存期間が1981年末まで伸びました。
 なお、1985年3月に車両設計事務所が発行した説明書「100系新幹線旅客電車説明書 量産先行車」には、「国鉄色見本帳に『白3号』で登録した。」の記述が見られます。文脈から、ここでの「色見本帳」は「色見本台帳」を指しているのではないかと考察していますが、実際にその通りだったかは検証できていません。

「約180種類の色彩」の記述について

私の「制定色の体系に関する考察」が正しいものであると、間接的に証明されたことに驚きを感じています。1981年末時点で存在していたと考えられる色(欠番を含む)は下記の172色です。

赤:    1号~13号 (14号~16号は1986年制定)
薄赤:   1号~3号
ぶどう色: 1号~5号  (5号は1986年に再度制定されている)
とび色:  1号~3号
朱色:   1号~5号
黄:    1号~5号  (6号は1983年制定)
クリーム色:1号~10号  (11号は1963~1982年に、12号は1982年制定)
黄かん色:       (黄かん2号は1986年に制定)
黄かっ色: 1号~10号
淡緑:   1号~8号
黄緑:   1号~7号
緑:    1号~14号  (15号は1985年、16号は1986年制定)
灰緑色:  1号~4号
青緑:   1号~5号   (1号は2度制定されている。6号は1983年制定)
淡青:   1号~2号
青:    1号~22号   (青22特色は除外、23号~26号は1986年制定)
灰青色:  1号~4号
灰紫色:  1号~2号
薄茶色:  1号~17号 
灰茶色:  1号~7号  (灰茶8号は1986年制定)
ねずみ色: 1号~6号
灰色:   1号~16号
黒:
白:          (単に白と1号~3号が存在、後者は1985年制定)
銀色:
(金色:        1983年制定)

ご覧のとおり、欠番を含めて数えても上記の180種類には満たないのです。
欠番が実在していたことは確定的であったと考えられ、さらに現時点で存在が把握できていない色が存在していた可能性も考えられます。

[2024年7月7日追記]
上記の結論に至った経緯が不足していると思ったので、内容を追記します。
1⃣ (前回記事より)現時点で確認できている欠番は30色です。そのうち1981年末までに存在していたと考えられる欠番は、①~③に属する26色(クリーム色11号は1982年1月制定の可能性があるため除外)です。
2⃣ 上記「1981年末時点で存在していたと考えられる色」では172色が数えらています。ここにおいて、欠番を除外すると172-26=156色になります。
3⃣ 「色いろのはなし」では約180種類と提示されているので、欠番が存在しなかったと仮定した場合、180-156=24色 完全に未知の色があるということになります。
4⃣ 今までの経験則に基づいて考えると、24色の未知の色があったときに
その全ての情報がどこにも書かれていない(どこからも情報が漏れていない)とする考え方は現実的ではない(浮上式鉄道の資料以外は、管理が厳重化された1980年代中期以降の資料でも情報が漏れていることがあるため)と考えられる。
5⃣ さらに欠番が存在しないと仮定した場合、前々回記事「国鉄制定色の付番について(整理・私見)」でも引用した

「青15号はあさかぜ号の色として新しく作られたもので,(中略)車両関係の青系で15番目にできたので青15号と呼ばれた訳である。」

亀山尚文(1958).「新あさかぜ号」『塗料の研究』(34).pp16-18 https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/3263307?tocOpened=1

…という記述にも矛盾が生じると考えられる。(例:黄緑1~4号はすべてが欠番として考えられている。これらの色が存在しなかったとすると、黄緑
5号、6号は黄緑系統の1番目、2番目の色であるにも関わらず、唐突に5号、6号として付番されたことになってしまう。これは、上記の亀山氏の説明に矛盾する。)
6⃣  4⃣・5⃣の2点において、欠番が存在しないと仮定した場合に矛盾が生じると考えられるため、欠番は存在していた(実在していた)と考えられる。
…上記の経緯により、私は「欠番が実在していたことは確定的であった」と考察しました。

国鉄車両関係色見本台帳の原本が残っていたら…
いよいよ国鉄制定色の全容が見えてくるのではないかと考えています。
(JR各社の倉庫のどこかやOB宅のどこかで長い眠りについていないだろうかとあらぬ想像をしてしまいます。既に廃棄されてしまっていて、どこにも無いのかな…)

2024年7月6日 第1版公開
2024年7月7日 第1版追記

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