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国鉄改革のあゆみ 11

国鉄改革に伴う一環として、職員の給与査定を遅ればせながら導入する方針を決めた国鉄当局の話でしたが、今回は国鉄でも最大派閥の国労の見解について述べて見たいと思います。

国労、酒井副委員長(当時の肩書き)の談話を公企労レポートから引用しますと。

こ回、この時期に期末手当の査定という提案があった背景をどう見ていますか】

 国鉄のいわゆる分割・民営化に向けて労務管理を強化するための差別支配政策の一つとしてこの問題は出されたのではないかと思います。
 しかし、現実には公務員ならびに公労協の各組合にも査定は行われているわけですから、われわれとしては時期も時期であるし、内容的に差別支配は基本的に認められないことであっても、周囲の状況から考えて管理者の心情的行為により勤務成績をうんぬんして差別をつけることを阻止することを前提に、具体的な要求を提示して当局側と早急に交渉をつめたいと考えています。

公企労レポート

というように、国労らしい回答といえば回答なのですが、あくまでも今回の取組は労務管理の強化であることを前面的に出していることが伺えますが、全て反対というわけではなく、条件闘争的になるであろうということを以下の記者との質問の中で答えている点は注目されます。【国労は最終的には、左派がイニシアチブを取り、さらに先鋭化していくところがあり結局大局を見誤るのですがまだ、この時点ではある程度右派的な抑止力が働いているようにも思えます。】

【基本的には了承ということですか】
いや、査定の方法として二つの方法があるわけですね。期間率については、議論はあっても客観的にわかるものです。
 成績率の方は勤労意欲とか、態度とかいろいろあるわけで、自分では一生懸命やっているつもりでも客観的な基準はない。だからこういうことはやめて他の企業体のように期間率でやるべきだという要求を中心に、早急に自主解決を求めて交渉をつめるという方針です。

公企労レポート
  1. とあるように、欠勤期間に対して夏期手当を調整するのはやむを得ないであろうが、成績率の方は基準が曖昧なためということが述べられています。

    実際に、郵政でも郵政公社の頃に新給与体系が実施され、成績率による査定が導入されましたが、複雑になりすぎて結局うまく機能しない部分が多々ありました。
    民営化された郵政では、動行った給与査定体系になっているのかはわかりませんが、郵政公社時代の方針を踏襲しているのであればかなりややこしい物になっているような気がしてなりません。

    ただ、ここで注目しなくてはいけないのが、「勤労意欲とか、態度とかいろいろあるわけで、自分では一生懸命やっているつもりでも客観的な基準はない。」という部分です。

    少なくとも、こういった基準は現場管理者による裁量権が大きくなる可能性があるのですが、これに関しては詳細おそらく下記のような職員管理調書に基づくさてが行われたのではないかと思われます。


    国鉄があった時代 国鉄再建監理委答申_経営形態から引用


    職員管理調書(抄)
    基本事項(略)

    特記事項

    1、一般処分

    停職の処分通告を受けた回数は何回か。
    停職の処分通告を受けたのは何年度か。
    減給の処分通告を受けた回数は何回か。
    減給の処分通告を受けたのは何年度か。
    戒告の処分通告を受けた回数は何回か。
    戒告の処分通告を受けたのは何年度か。
    訓告を受けた回数は何回か。
    訓告を受けたのは何年度か。
    厳重注意を受けた回数は何回か。
    厳重注意を受けたのは何年度か。

    2、労働処分

    停職の処分通告を受けた回数は何回か。
    停織の処分通告を受けたのは何年度か。
    減給の処分通告を受けた回数は何回か。
    減給の処分通告を受けたのは何年度か。
    戒告の処分通告を受けた回数は何回か。
    戒告の処分通告を受けたのは何年度か。
    訓告を受けた回数は何回か。
    訓告を受けたのは何年度か。
    厳重注意を受けた回数は何回か。
    厳重注意を受けたのは何年度か。

    3、昇給

    3項8号を適用されたことがあるか。
    3項8号を適用されたのは何年度か。
    注意昇給を受けたことがあるか。
    注意昇給を受けたのは何年度か。
    抜てき昇給を受けたことがあるか。
    抜てき昇給を受けたのは何年度か。

    4、昇格

    基準昇格において短縮があったか。
    基準昇格において延伸があったか。

    5、行賞(個人及びグループに対する行賞を対象とし、職場単位の行賞は除く)

    本社からの行賞回数(功績章を除く)
    地方機関長、部・次長クラスからの行賞回数
    運輪長、現場長からの行賞回数
    業務に関連して部外団体からの行賞回数

    6、派遣

    派追実績の有無
    派遺の期間(内定を含む)
    派遺先からの中途復帰の有無及ぴ中途復帰の理由

    7、復職前提休職

    復職前提休職中でおるか。
      

    評定事項(注意事項)
    現職に就いて日の浅い職員については、その者が相当期間を経過した場合を想定し判断すること。その際、前職での状態をも参考にすること。

     

    業務知識・・・業務連行に必要な知識はあるか。
    技能・・・・・・・業務連行に必要な技能はあるか。
    計画性・・・・・業務連行に必要な計画性はあるか。
    業務処理の速さ、手際良さ・・・業務連行に当たっての速さ、手際良さはどうか。
    業務処理の正確さ・・・業務遂行に当たっての正確さはどの程度か。
    判断能力・・・業務運行に当たって、状況に応した適切な判断ができるか。
    責任感・・・・・業務連行に当たっての責任感はあるか。
    自発性・・・・・自発的に業務に取り組んでいるか。
    協調性・・・・・業務連行に当たり、周囲の職員と協調しているか。
    業務改善・・・自らの仕事に対し問題意織を持ち、改善・改良等を提起する意欲と能力があるか。
    職場の秩序椎持・・・職場の秩序を乱すことはあるか。
    服装の乱れ・・・・・・・リポン、ワッペン、氏名札、安全帽、安全靴、あご紐、ネククイ等について、指導された通りの服装をしているか。

    ①指導された服装をしていないことがあリ、指導しても従わない。
    ②指導された服装をしていないことがあるが、指導されれば従う。
    ③常に指導された通りの服装をしている。
    ④常に指導された通りの服装をしており、その上清潔、端正を保つよう努力している。

    指示・命今・・・作業指示・命令を真剣に受け止めているか。
    態度・言葉使い・・・態度・言葉使いは適切か。
    勤務時間中の組合活動・・・勤務時間中の組合活動を行っているか。

    ①勤務時間中の組合活動を、時々行っている。
    ②勘務時間中の組合活動を行ったことがある。
    ③勘務時問中の組合活動を行ったことはない。
    ④勤務時間中の組合活動を行ったことはなく、見かければ他の人にも注意している。(注意事項)「勘務時間中の組合活動」とは、「職員の組合活動に関する協約」に基づくもの以外である。ワッペン着用、氏名札未着用については12項で回答すること。

    勤務に対する自覚、責任感・・・勤務に対する自覚、責任感があるか。
    出退勤・・・出退勤特刻に対し、自ら厳しく律しているか。
    信頼・・・・・上司、同僚、部下から信頼されているか。
    増収活動・・・増収活動に対して積極的か。
    現状認織・・・国鉄の厳しい現状を認織し、業務に取り組んでいるか。
    総合評定・・・総合的にみて、次の①~⑤のどのランクに該当すると評価するか。

    以下は不明

    おそらく、こういった調書に基づく査定をということは聞いていたと思うのですが、それに対して国労としては反対の立場をとらざるを得なかったのでしょうが、成績率の査定は所属長が行うとされているが実際には現場長が行うことになるであろうから、現場長が手心を加える可能性が高いと指摘しています。

    というのが、過去に昇給に際して、口実をつけて昇給を遅らせた例など、やはりはっきりしない問題があり、極端な話、顔が気に入らない、顔つきが悪いなどを理由にならない理由をつけた例がなかったわけではないと言われており、そういったことが今回も行われることがあるので反対といっているのですが、ちょっと情けない話と感じてしまうのは私だけでしょうか。

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