ガロア体上多項式の微分

以前の記事において$${\sigma(z)'}$$を用いていたが、例題で学ぶ符号理論入門においてガロア体上の多項式の微分の定義は明確でない。どこかに記載されてるかもしれないのだが見つけることができない。
例えば体$${GF(2^3)}$$で誤り位置多項式が$${\sigma(z) = \alpha^5 z^2 + \alpha^5 z + 1}$$と得られたとする。ここで、微分を$${(x^{n})' = nx^{n-1}}$$のようにとらえようと思っても、係数の世界は体$${GF(2^3)}$$だから"2"はない。$${\alpha^2}$$になるのかほかの数になるのか分からず迷った。

ではここでの微分はどういう操作になるか?

結論から言うと以下の操作を行うことになる。

$$
(x^{n})'=
\left\{
\begin{array}{ll}
x^{n-1} & (nが奇数) \\
0 & (nが偶数)
\end{array}
\right.
$$

証明というか、辻褄合わせだが、以下のように考えている。
まず、本書での微分の使われ方からは以下の性質は担保されてる。

$$
x' = 1 \\
(xy)'=x'y+xy'
$$

これを用いて次のようにできる。

$$
(x^{n})'
= x'x^{n-1} + x(x^{n-1})' \\
= x^{n-1} + x(x^{n-1})' \\
$$

後は数学的帰納法で結論の式が導ける。まず、

$$
(x^2)' = x'x + x x' = x + x = 0
$$

$${n=k}$$までは証明されたとして$${n=k+1}$$で証明されることを示す。$${n=k}$$が偶数とすると

$$
(x^{k+1})' 
= x^{k} + x (x^{k})' \\
= x^{k} + x 0 \\
= x^{k}
$$

よって$${k+1}$$で成り立つ。$${n=k}$$が奇数とすると

$$
(x^{k+1})' 
= x^{k} + x (x^{k})' \\
= x^{k} + x x^{k-1} \\
= 0
$$

よって$${k+1}$$で成り立つ。以上より数学的帰納法から結論の式となる。

したがって、例の誤り位置多項式は微分すると

$$
\sigma(z)' = \alpha^5 (z^2)' + \alpha^5 z' \\
= \alpha^5 \\
$$

となる。

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