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良いお客さんをわきまえている

・小売店に4年間勤めていたものだから、
日々、お店に立ってた売り手として、
たくさんのお客さんを見てきた自負がある。
お店にはほんとに色んなお客さんがいます。

お店の売上を立てる身としては、
たくさん買ってくれるお客さんには来て欲しいし、
おしゃべりが長くて何も買って行かない人は
「またあの人か」と、ちょっと警戒してたり。
当然、そんな両極端なお客さんばかりじゃなくて。
毎日、決まった時間に決まった商品を
買いに来てくれる人や、
週末にまとめて買ってく人、
頒布会の商品を引き取りに月1回だけ来店される人。
ぼくの勤め先はワイン屋さんだったんだけど、
ワインバー併設の店舗なんかは、
もっと「クセの強い」お客さんがいっぱいいます。
別にひいきをするわけではないけれども、
本当に良いお客さんには、
本当に良い商品を買ってもらいたくて、
精いっぱいを尽くすのは販売員の性かもしれない。
これは完全に話の脱線だけど、
百貨店の中の店舗に勤めていた時、
まだ2年目の頃だったか、
外商付きのお客さん、いわゆる、
その百貨店の「お得意さん」から、
「50年前のシャトー・ペトリュスを」なんて
注文を受注したことがあって。
海外に在庫を持つ卸商社の会社から仕入れを
おこすのだけれど。
かくかくしかじかの、自分の在庫確認ミスによって、
あわや、300万円の売上機会を
失注しそうになったことがある。

と、まあ、前置きが長くなったけれど。
そんな経験があるから、自分がお客さんとして
買い物をするときは、「良いお客さん」を
わきまえているつもりである。
洋服屋さんなんかに行くときは、
あらかじめ、何を買いに来たかと予算を伝えます。
でも、その予算はほんとの予算より少し低い金額で。
買う意思のある服は躊躇なく試着します。
それで、「これめっちゃ良いですねー」なんて
言ってると、スタッフさんもなんだか乗ってきます。
そうこうしてると、スタッフさんの方から
「実はこれも良いんですよ」なんて、
当初「買う予定」として伝えた服ではない
洋服をおすすめしてきてくれます。
で、そういう服こそが良かったりするんです。
自分では選ばない服だし、スタッフさんとしても精を尽くしてお勧めしてくれる商品のはずだ。
こんなやりとりで、この前は、うっかりと、
最初はもう頭、買うつもりもなかった
7万円のシャツを買ってしまったんです。
最初に考えてた予算のことなんてもはやどこ吹く風。
そして、お会計のときには、多少の世間話を交わして
颯爽とお店を後にします。
今日もまた「良いお客さんができた」と
自己満足にひたって家路を辿るわけです。

そう。
これは、ただ、人生で最も高いシャツを買ったという
話なのだ。

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