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夫婦絵師 の二

 ある日与平が和尚さんに呼ばれて行ってみると、和尚さんのほかにもう一人男の人がいました。

「おお来たな。こちらは版元の葛屋さんといってな、お前さんの絵を見せたらたいそう気に入って、一度話してみたいというのでお前さんを呼んだのだ」

 葛屋さんは目じりが下がっていつも笑っているような顔で、でっぷりと太っていました。都市は和尚さんよ与平の、ちょうど間くらいでしょうか。与平は、なんだか大黒様のようだなあと思いました。

「あんたが与平さんか、最初絵を見たときにはとても信じられなかったが、絵を描いたのは初めてだっていうじゃあないか。それでこれだけ描けるとは、こりゃ大したもんだ」

 与平は版元というものがなんだかかよくわかりませんでしたが、葛屋さんは話を続けます。

「そこで相談なんだが、あんた浮世絵を描いてみないかい?なあに難しいことはないから心配はいらん。あんたはただ絵を描いてくれりゃあいいんだ。あとのことはこちらで万事引き受けるから」

 与平はまだ事情がよくわかっていませんが、自分の絵を褒められて気分がよくなったので引き受けることにしました。何を描くかについては、和尚さんの似顔絵が上手かったのだから役者絵がよかろうということになりました、ならば役者の顔を見なければならんと葛屋さんのはからいで芝居を見に行き、そして描いた与平の絵は人気となり、よく売れました。


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