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兄貴の彼女

 精一杯背伸びをしたつもりの僕はいつものように軽くあしらわれ、それでもまだ彼女を諦めることはできなかった。

 兄貴の彼女。そうでなければよかったのか。僕の方が兄貴よりも先に、彼女に出会っていれば。いや、おそらく……限りなく100%に近く、そうはならないだろう、と思う。僕の方が先に彼女と出会っていたとしても、兄貴と出会ってしまえば運命はまた、元に戻る。それが最初からの決定事項であったように。

 兄貴のファッションやしぐさを日々研究しては真似ていた僕に、兄貴より先に気づいた彼女は言ってくれた。

「ひろくんは、ひろくんなんだから。たかくんの真似をして、たかくんになろうとしなくていいんだよ」

 もちろん本心から僕のことを思って言ってくれたのだと解ってはいる。だけど、それでも。それでも僕は、あなたの隣にいたいのです。僕が僕じゃなくなったとしても。

 あるいはこの時が、僕らにとっての最期の幸せだったのかもしれない。たとえ「兄貴の彼女」でもいい。このまま彼女のそばにいられたら。そう、僕は思い知ることになる。

 永遠なんてない。


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