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つきあいたい

「つきあってください!」

 作法通り右手を出して頭を下げる僕に

「よーしわかったさあこい!」

 そう答える先輩。うんまあわかっていたんだ多分こうなるんじゃないかと。

「いやそうじゃなくて」
「何が」

 半身になって腰を落とし、突き合う満々で構える先輩は「自分から言い出したくせに」とでも言いたげな顔をしている。

「先輩のことが好きなんです」
「ま、うすうすそうじゃないかと思ってはいた」

 そのうえで平気でこういうことをするんだこの人は。

「お気持ちだけありがたく受け取っておきます。だけど、現時点であなたとそういう関係になることは考えられません。ごめんね」
「何でですか!先輩のためなら何でもします!」
「なんでって言われてもなあ……お願いしても無理なものは無理だろうし……」
「もしかして先輩、異性に興味が無いとか実は同性に…」
「全然興味ないわけじゃないんだけどね男女のお付き合いとかそっち系」
「だったらなんで!」
「だって、弱いじゃん。キミ」

 ぐうの音も出ない。そりゃあ僕は間違いなく先輩よりも弱い。しかし、この学校いや外にだって、先輩より強い人間なんてそうはいないだろう。なにしろ先輩は強い。少なくとも同世代では誰も相手にならない。なにしろ先輩ときたら入学三日で全校をシメたとか、いやシメたのは市内の全高校だとか、吉田沙保里の生まれ変わりだとか……あくまで噂だが。

 冗談はともかく先輩が強いのは本当の話で全、前に出場した大会では慣れない寸止めルールだったことが災いし、勢い余って相手をKOしてしまったために優勝を逃したほどだ。

 対して僕の方は、日ごろから鍛えている甲斐もあって地方大会で勝ったり負けたり。相手が勝ったり僕が負けたり。それでも、いつかはきっと……

「何でもしますって言うなら、まずは強くなってからね。私よりも」
「絶対強くなります!先輩より!」
「ま、期待はしないで待ってます。じゃあまず一本!」
「お願いします!」

このあと先輩と僕は、心行くまでつきあった。

*画像はイメージです*


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