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中学生的な何か。タイトル未定。

 ぱちりと目が合った。相手は一瞬「しまった」と顔を見せたが、すぐに店を出ていってしまった。今思えば、すぐにお店の人に言うべきだったろう。何しろ万引きの現場を見てしまったのだから。そのときの僕はそんなことを思いつきもせず、慌てて彼女のあとを追った。

 彼女はクラスメイトで、成績もまずます。人気者とまではいかないが逆にいじめられているわけでもなく、明るく、かわいくて……

 しばらく歩いた彼女は公園に入り、ベンチに座った。僕は迷ったが、思い切って彼女に近づいて聞いてみた。

「なんであんなことしたんだよ」 
「いろいろあるのよ」

 悪びれもせずにそう答える彼女は、なぜか楽しそうだった。鞄から取り出した何かを僕のポケットに押し込んで、彼女が耳元でささやいた。息が耳にかかる。

「これで、共犯だね」

 彼女はいたずらっぽく笑うと、すぐに帰ってしまった。踊るように跳ねるように。僕はその後姿を、ただ見送ることしかできなかった。

 そして大人になっていく。



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