3年生 なないろライブの話
なないろライブ
長い歴史を刻んできたエールライブという名前を変えた裏には、まずこのライブをやるかやらないかの話し合いから始まった。
毎年議題に上がる「エール論争」。歴代の先輩方もこのライブが及ぼす部員の負担についてたくさんの議論を重ねて来た。話し合いの末、ライブを毎年行っていたのだと、自分たちが執行をとって初めて気づくことだと思う。
自分たちも例外ではなく、エールライブをすることで、成績が下がりやすいとか、悩む子が増えるとか、そういうデメリットがたくさん出された。
けど一概にみんなエール中止とは言えなかった。たぶんこのライブがあることによって成長できることを個人差はあるとは言え分かっていたからだと思う。
だからいろんな案を出した。具体的にはあんまり覚えていないけど、ライブをなくす代わりにネタ見せはしようとか、指針とか落研を深める期間にしようとか、いろいろ話し合った。初顔が始まるよりもっと前から長いこと。
結局このライブが持つ意味の大きさに、ライブをしないという選択肢を取ることができなかった。
僕が思うのは、このライブが一番考えることのできるライブだから残すべきと思った。
忙しすぎて、期間が短すぎて考える時間がないという意見があるかもしれないけど、僕は確実に考えるにはこのライブだと思う。
なぜなら一番お祭り感のないライブだから。
新歓ー新入生を迎え入れるお祭り期間
初顔ー1年生のデビューライブでお祭り期間
夏学ー夏休みで1日中落研をする。遊んだりとお祭り期間
創大祭ーその名の通りお祭り期間
1年生ー1年生しかいないというお祭り期間
冬学ー3年生の引退がある最後のライブ。ということでお祭り期間
普段は実は落研ってふわふわした中でライブをしている気がするけど、エールだけは地に足つけてライブを作る。だからこそ悩む。けどそんな中で活動するからこそ落研の活動とか、ライブをする意味とかの本質がわかる。
だからこのライブを消すことは僕の中ではあり得なかった。それぞれの学年がそれぞれの部員が大いに成長に向けて悩むべきだ。
名前を変えたのは、「テストに向けて創大生にエールを送る」なのに送る側が潰れていたら意味がないってところから、タイトルに意味を持たせてパンクするくらいなら意味を持たせないライブ名にしよう!っていう逆転の発想だった。
そんなこんなで始まった
なないろライブ
自分で言ったそれぞれの持つ悩みに向き合えばいいという言葉がそのまま自分に返ってきた。
ライブに向けて、その先の夏芸会に向けてとんでもなくプレッシャーがあった。2年NOROSHIを終えた時に誓った『圧倒的になる』のため、このライブで圧倒的な笑いと一位の結果が必要だった。僕らが一年の時のダイソン、2年の時のアップカミングは新歓、初顔と一位を取っていた。僕らもそこまでは一緒。
だけど先輩方はエールライブでは調子を崩した。
真の意味で圧倒的になるには、その呪縛を超えて一位を取って、僕らが取らなかったら誰が日本一を取るのかと思わす力が必要だった。
そしてなにより最後の執行
去年のこのライブは失敗だった。
自分たちが一年以上執行を取って、先輩から託してもらって、後輩を成長させて、そんな執行の締めくくり。
ここまでやってきたことを後輩に示す、最後のチャンス。執行期としてやってきたことの正しさを証明する最後のチャンスだった。
このライブでニュースとなったのは、無添加劇団の復活だった。
突然だった。
けど、みんな嬉しそうにしていた。特に同期の裏方は。
でも僕は他の同期のコント師を思うとキツかった。
だって自分がコントをやっている身だとしたら、ずっとコツコツやってきたのに、他の同期が復活したことによりあんなにも露骨に喜ばれたら、やる気はなくなると思う。
だけど、腐ってる様子はない。ほんとにすごいな。
たけしとなないろの頭に対話をした。とにかく、「この前期3年演者として、デスコ1人で戦わせてほんとに申し訳なかった。このなないろで絶対に結果を出す。夏に勝つために、なにがなんでもこのなないろが大事で、1番結果にこだわる」って、久々に熱い対話が出来て、すっげぇ嬉しかった。
この日初ネタ見せの2日前。
「まぁネタの題材決まってないんだけど」
たけしらしい一言でこの対話は終わった。
1年生は毎年恒例のように、ネタに苦しむ。
はたはただけはネタ見せバカ面白かった気がするけど、彼らを見る目がやっぱり天才だという目に部内がなっていたのも大いにあると思う。部内のネタ見せを信用しきらないって心に誓ってたはずなのに、はたはたを企画映像後に置いてしまったのは、今でも後悔している。それははたはたに申し訳ない事をしたから。決して彼らを非難してる訳じゃない。もっとウケる香盤があった。香盤決めってほんとに奥が深いと最後の最後に気づかせてもらった。
ジャンボリーはまぐろがひたすら悩んでたね。けどネタに対するストイックさは先輩にも勝ってた。この時初めてギロチンが後輩のネタを手伝っているところを目の当たりにして、少し嬉しかった。まぁこの時には演者長って決まってたし自覚が芽生えたのかな。
好奇心は変な漫才でデビューした事でだいぶ惑わされてたんだな。ごめん。
そしてなによりハードボイルド。大弟子・山内の力になれなかった。毎日連れ回して、ずっとネタを見てやってた。からこそ一番うけさせたかった。彼が落研に前向きになればなるほど、嬉しかったし、のめり込もうとしてるのは1番知ってた。だからお笑いで戦うことのかっこよさと爽快感を味わって欲しくて、そして落研で誰かのために戦うこと。青春としてのめり込むことの意味を伝えたかった。そのためにはウケないと人は続けることができない。その請負人だったのに、僕は面白くもすごくもなんともなかったんだ。
2年は国際教養の2人が帰ってきたことによる、漫才師の復活かな。2組とも真面目が故にそれぞれの苦しみ方してたけども。
人のネタをとやかく言う前に自分たちはと言うと、
最後に生死を分ける手術が包茎手術っていうボケが面白いと思って書き出した。医者の題材。
もちろん大トリに入れたこのボケは盛大にすべったので外した。
ネタ見せをしてもウケるけど、ボケがウケたり、ややウケになったりしてる。なんかネタとしての重厚感。満足感が一切なかった。
そんな時、ゲネの設営をする前の時間に皇太子にネタの相談をしてみると、「なんか医者って広いからシチュエーションがあっちこっちいって大きい笑いになりづらいんじゃない?」的な事を言われた。そのアドバイスですぐに思いついた。つかみのためだけに入れてたDr.コトー。全編島の唯一の医者でいこうと。そう決めるとすぐにネタが書けた。
当日の昼までネタを練ってネタ見せして。満足できるネタはできた。
当日。意気揚々と復活した戦友・無添加劇団が目の前で引かれてすべっている姿を見て急に変な汗が止まらなくなった。彼らがすべっている姿なんてほとんど見た事なかったから。
緊張の中、出囃子にアタックがかかり、ひんの「カナディアンロッキー!」に若干被せるように大声で「はいどうも!!」と声を揃えて小走りで出た。
はいどうもに1番こだわった。2年の時になぜウケないのかどうしたらウケるのかを徹底的に考えて、1番効果があったのが登場だったから。
覇気を纏うにはまず空間を支配するはいどうもからなんだと。
2年まで少しスカして入ってくる漫才師に憧れて、ヌルッと入ってきていた尖りボーイズは、お客さんに笑ってもらいたい、ウケたいの一心で1番したくない事を1番徹底してやった。
漫才のウケは上々だった。けど、一位は取れなかった。悔しかった。
けどライブを終えて、執行をやり切った同期や、この期間悩み抜いた末ライブを終えた後輩たちの顔を見ると、自分の順位なんてどうでも良くなっていた。
とりあえず今日はおいしいお酒が飲みたい。
落研部員と。
なかなか学セン裏から帰らないみんなにイライラしながらも、この一瞬の高揚感が永遠に続いたらいいのにって思った。
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