書店用語の基礎知識 その一 2011年2月9日

この用語集は、花本の独断&偏見で選ばれた書店で使われる言葉に解説を加えたものです。なにしろ裏をとらずに書くつもりなので、正確でも精確でもなくて、花本なりの解釈であったりする場合もありますし、花本の勤務先ブックス・ルーエでのみ通用する言葉になっている可能性すらあります。そのあたりを踏まえないと、ちょっとマズイかとおもいます。どうしても花本個人の仕事自慢みたいな要素が加味される部分もあるっぽいので、そこは読み流すか、内心感心してくれたりすると本人は喜ぶようになってます。順番は思いついた順です。


書店のパソコンにブックマークされてるサイト編
こだわり検索
トーハンがやってる書籍検索エンジン。使い勝手が良いからぼくは、家のパソコンでもブックマークしてます。

ブックストア
トーハンのPOSシステムと連動したOSで自店内の書籍の在庫を確認できる。

ブックライナー
トーハンが客注用に書籍を常備している巨大倉庫がどっかにあって、ここに在庫があれば中3日で本の取り寄せができる。要は緊急仕入れのためのバイパス。

※以上3つがタブに収まっていることが多い。お客さんに言われた書名をこだわり検索で調べて、ブックストアで在庫をみて、無ければブックライナーの在庫を調べる。という手順。探してる本を直で担当者に訊いてよく返ってくる言葉が「う~ん、わかんないからこだわってみて」商品知識が少ない者はこだわり検索に依存します。こだわり検索でヒットしない場合は、グーグルです。

その他のサイト
赤本ウェブ。教科書ガイドウェブ。絵本やさん。など専門分野のいろいろとか。
一時国会図書館のウェブを入れてたけどあんまり使わなかったんで消した。

空犬通信
かつてルーエに書店研修に来てくれた縁で知り合った小学館の編集者空犬氏の個人ブログ。出版業界ネタがどこよりも早く、正確に載ることで抜群の信頼を得ている。訪問者がすごく多くて、出版関係者は何かと話題のタネにする。特に書店の新規出店、閉店の情報が重宝がられているようだ。それとは別にやたらルーエが取り上げられることを訝しむ人もいる。ジュンク堂吉祥寺店のNさんは、それが気に食わないと露骨に表明しているらしい。空犬氏本人については、項を改めてまた書くかもしれない。
BMS
ルーエがやってる通販サイト。BMSは、ブック・マガジン・ショップの略で何ら面白みはない。スタッフには社長の道楽みたいな目で見られているが、本当にそうで梱包やら商品管理やら全てを花本在籍フロアが受け持っているので、忙しいときに社長から「これ明日までに送っといて~」とか言われると、途端に不機嫌になり、接客が目に見えて杜撰になる。稀に大口の注文が入り少し潤うこともあるようだ。

パブライン
紀伊国屋書店が出版社向けに有料でリアルタイムでの紀伊国屋全店の売上データを提供するサービス。大手版元はほとんど利用してるはず。版元の人は「新聞広告でパブラインもがーんと跳ね上がってたんでルーエさんも是非!」みたいな営業トークをしたりする。

ショタレ
語源が全くわからず、今さらきけない最たるものだ。これは要は行き場を失くした本のこと。倒産した版元の本は返品先がなく、売れないものはショタレとなる。ショタレる。買い切り扱いの本が売れ残ってショタレることもある。書店のストックやバックヤードには必ずけっこうな量のショタレがある。まれに気まぐれに店頭に出して、売れることがあって、そんな時は内心小躍りする。

書店マーフィー
いろいろなバリエーションがあるけど、一番有名で頻繁に取り沙汰されるのが、返品した途端に問い合わせが殺到する、ってパターン。

シュリンク
コミックにかかってるビニールコーティング。花本はこれの機械シュリンカーをよく詰まらす。コミックだけでなく高額商品やアイドル写真集なんかにも活用する。

クレーム
こわい人はけっこう多い。レジの電話の近くには、要注意人物リストがあったりする。つまりクレームにも常連さんがいるのだ。

カンペ
レジまわりに貼ってある「蹊」「基督」近隣の大学関係者が領収書を切る際に、まごつかないように準備している。

見計らい配本
とっても売れている本が注文してないのに入荷したりする。それが見計らい配本。書籍流通でのみ起こりうる現象。追加注文のタイミングを慎重に練って、仕事している書店員をくじけさせるからぼくは、やめてほしいとおもっている。でも助けられることもある。でもやめてほしい。というようなことをある媒体に熱く書いたんだけど、黙殺された。
新文化
そのある媒体というのが日本唯一の出版業界紙「新文化」ぼくは、入社したての頃、ここの社長と同席する機会があって名刺交換した際、新文化さんってどんな本を出されてるんですか?と尋ねてしまって、大変無礼者だったことがある。でも縁があって新文化のウェブで「ルーエからのエール」という連載を長らく続けた。未だに一応リンクが残ってて恥をさらしつづけているが、そんなに評判は悪くない。ただ何度か完全にお蔵入りした原稿があることを知る者は少ない。一度目は、雑誌返品の際の付録の扱いについて、書店員へのご褒美だ、みたいな自虐的なギャグを書いたら、どっかの書店と消費者組合みたいな所から激しいクレームが来た。らしい。問屋にも累が及んで、ちょっとした騒ぎになってしまい、トーハンから正式な文書として、付録ごと返品を出すようにお達しが下った。版元は、どうせ処分なんだけどなあ、と思っている。ようだ。二度目は立川のオリオン書房に遊びにいったことを「立川オリオン帝国潜入記」ってタイトルで書いたら、うちの社長に怒られて自主規制することになった。社長が頭上がんない人がオリオンにいるんだって。その後本紙の方で書店員が持ち回りでコラムを書く「レジから檄!」というコーナーもやった。今はウェブ本の雑誌で「横丁カフェ」という書評コーナーをやっている。頼まれると断らないのだが、文章を書くのはけっこうしんどいからあんまりやりたくない。

欠本
版元が用意している注文書と棚を照らし合わせて、必要なものを仕入れる作業のこと。ランクが商品ごとについているけど、あまりアテにならない。ような気もする。

代行の人
書店営業に来るのは、版元の人だけでなく、業務を委任された会社の人だったりする場合は多い。熱心な人とそうでない人の落差があるのは、版元の人でも代行の人でも変わりない。

平積み(整理)
フロアをぐるっと一周して置いてる本の位置が乱れているのを直していく作業。ぼくはこれが大好きで、あちこちああでもなく、こうでもなく、と置き方を変えながら工夫してまわるので異様に時間がかかる。

ポップ
書店に古くからある由緒正しいメディア。先日、博報堂の人がポップのことをピーオーピーと呼んでいて、面喰った。業界用語か。ポップ王として君臨する三省堂の内田さんは、一日一作仕上げている。

カリスマ書店員編
白川さん(オリオン書房)
カリスマ書店員と最初に呼ばれた人。本人はカリスマと言われるのは、いやみたい。本屋大賞を立ち上げたり、作家や編集者に顔が利く人で人格者だ。ぼくはかなり尊敬していて、白川さんもたぶんぼくを見込んでいるような気がします。そんな気がします。今は一緒に「立川読書倶楽部」という外国文学の勉強会を運営している。

笈入さん(往来堂書店)
千駄木の小さい書店の店長。大学で書店学みたいな授業を持っているらしい。いい人。

伊野尾さん(伊野尾書店)
顔がこわくてプロレスが大好きな人でそれが高じて、書店プロレスというイベントをうったことで有名。ここも小さい書店なのだが棚をどかしてプロレスラーに裸エプロンをさせて実際にファイトさせた。去年は書店野宿というイベントをうってお巡りさんに怒られた。

吉っ読(きっちょむ)
吉祥寺書店員の会。とゆうわけで5年くらい前に空犬氏と花本で立ち上げた組織。去年からイベント「ブックンロール」を主宰する。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?