商店街

 入るとすぐ左手にマクドナルドがある。週一回くらい利用する。少しすすむと右手にいかにも長年やってます、って感じにくたびれた靴屋がある。そのほとんど真向かいにあるのも靴屋で、こちらは安くして、がんがん売りますよ、って感じの新興の大型店だ。数年前に出店してきた際には、くたびれた店はつぶれるな、と周囲は危惧(はしてないけど)予感がしていた。が今も存続中である。
 靴屋ほど隣接してないが、眼鏡屋とドラッグストアもそのようになんだか奇妙に共存して、二店舗ある。
 やたらと店の入れ替わりがはげしい物件がある。最近ペットショップになった。その商店街と垂直に伸びている商店街にもできた。この地域はいま、ペットを養う余裕のある人が多いのだ、とかなんとかだれか言っていた。本当か。
 で、そのペットショップを運営する会社が犬カフェをオープンすることになった。100円ショップが撤退した跡地、地下の物件だ。一階と二階と三階は本屋である。ちなみに100円ショップは、ポジティブな撤退で、繁盛してるから垂直に伸びてるほうの商店街に、スケールを大幅にアップした物件を確保したのだ。
 私が勤務しているのは、その本屋のほうだ。朝9時にシャッターを開けるのは自分の役目となる。幾人かの常連が店内に入り、いつもの朝がはじまる。顔ぶれはほぼ決まっている。
 買う常連がいて、買わない常連がいる。買わない常連は頑ななまでになんにも買わない。毎朝居合わせてるわけで、常連同士も、あいついつもいるよな、とかおもってるはずだ。かと言っていないと心配になる、とまではならない距離が絶妙だ。小学生のとき近所の奴同士で登校していたことを思い出す。気が合うからじゃなく、家が近いから毎朝一緒にいる。まあ、小学生のほうがちゃんと「いないと心配」はしたけど。
 9時から10時までの一時間のムードが独特だ。このあたりの大型店やそこまで大きくない店も開店するのは、だいたい10時なんで、それまですることがない人たちのたまり場となっている。時間をつぶさんとする人の熱気が充満する。
 することがない人らをかき分けながら、雑誌を並べたり、ゴミをまとめたり、仕事らしきことをする。商店街の本屋の朝。

初出:八画文化会館vol.8 商店街ノスタルジア

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