いか文庫の戦慄

 得体の知れないことをしている人たちはこわい。嬉々としてやっていたら、なおさらこわい。というわけで、いか文庫に恐怖している者だ。
 日本にどのくらいあるのかいまのところ統計する基準すらない「エア書店」を運営しているいかたち(いか文庫の3方)。これを読んだ人から、わたしもやっている!などの声を拾うことができるだろうか。甚だ難しそうだ。
 きみたちは我々に奇妙な確信を感じさせる。自分たちこそが王道であるという本気の確信のようでもあるが、違う。王道など通らずとも到達できる道を見つけたよ!と無邪気に喜んでいる。しかも到達した先で自分たちが何を起こそうとしているのか、考えているようにみえない!
 いか文庫の公式イベント(いつか非公式イベントがまかりとおる可能性はけっこうある)であるイカナイト。その二回目が過日、中野某所にて行なわれた。いか文庫の正体を掴むことができそうな煽り文句に釣られて足を運んだ。結果から言おう。きみたちは、正体をあらわさなかった。メンバーの出自はわかった。で、おまえら何企んでんだよ!?
 わたしはひどく怯えている。リアル書店を代表して、今、身震いしている。個人的にも揺れている。「おれがやりたかったのって、あれなんじゃないか…」この足元がグラつく感じは、なんだろう。
 きみたちの企みについて少しわかってきたこともある。こうゆうことなんだろう。「まだ考えてない」そしてもっとおそろしいことに、きみたち当面考えないままやってくつもりなんでしょ?
 店主のツイートも不気味だ。本日も開店しました、と律儀に毎日報告する執念に狂気を見るのは容易い。ところが慣れてくるとその狂気をも日常になり、受け入れている自分に気がつく。
 町田康は、自分にのみ通ずる個人的な言葉を使って話す人を狂人と定義している。いかたちのコミュニケーションは、万人に通じている。プレゼン能力も極めて高い。にもかかわらず漏れてくる一抹の狂気。
 いか文庫は出版の最終的な装置であり、それを起動させてしまった今、我々にできることは… その装置を最大限に利用し尽くすことだ!!!

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