吉祥寺書店事情

 吉祥寺にはずいぶんたくさんの書店があることをご存知の方がだいたいこの文章を読んでいるのだとおもう。天下布武の覇権争いで殺伐とした空気がなぜか一切たれこめない。       
 店舗を越えてそれぞれのスタッフは、意見を交換したり、呑みにいったり、そのまま帰らなかったりする。去年の夏、ジュンク堂吉祥寺店の酒飲み共は、当時の自分の本拠地、西荻のアパートから本当になかなか帰ってくれなかった。
 リブロにお互い作家の長嶋有を敬愛してやまない人がいた。その人が企画実施した長嶋がらみのイベントに顔を出したことがあった。イベントスペースを用意している店舗ではないので、一体どこでどんな風にトークイベントが催されるのか、それを究明したくて参加したというのもある。フタを開けてみるとメインのフェア台をとっぱらって、ムリクリパーテーションで仕切って、パイプ椅子がそこには平然と並んでいた。恐れ入りまくりだ。
 啓文堂には、旧友を介して知り合ったコピーライターがいた。広告の世界のことは、よくわからないのだが、山師的なイメージが自分にはある。彼は誠実な山師だった。公園口のルノアールに呼び出され、イラストを描いている同僚を紹介された。それから3人で時々ルノアールに集まっては、コーヒーでねばった。そして完成したのは、大量の栞。ロゴには「吉祥寺読書応援団」。
 いろんなことをやってます。これからも。

初出:吉っ読冊子


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