植物癒しと蟹の物語

 どんな人にも必ず平等に訪れるのが「死」です。みなさんはそれに想いを馳せる機会をまだたくさんは持ってないかもしれません。大切な人を亡くしたとき、自分から遠くに離れてしまったように感じる。立ち直れないんじゃないかとおもうほどの寂しさを胸に抱えたときに、私はたぶんこの本のことを思い出すでしょう。小説家は親密な個人のためにこの小さな物語(寓話)を紡ぎました。不思議な生き物たちの語らいから、ぼんやりと立ち上がってくるのは、人が生きて、そして死ぬということへの問いかけです。物語には結末があり、そこで何らかの「答え」が示されるのが通常ですが、そうはなりません。優しい余白をすみずみまで味合わせてくれるのです。

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