やっつけ仕事の流儀

 たまに文章を書くように人から頼まれることがあって、そういった際には、ごくごく稀にしか断ることもなく、致命的に〆切を破ることもなく、なんとなくそれなりの仕上がりでこなしている気になっている。自分から人に依頼することもたまにあるので、最低限の努力は、もうせざるを得ないとおもっているわけだ。そんな私ですが、今回はやっつけ仕事でいかせてもらう!なぜなら〆切が15時間切っていて、とある本(本屋大賞受賞作)を読まねばならず(しかもまだ1ページも読んでない)、それなりの睡眠もとりたいし、ツイッターだってチェックしたいのだ。
 でも発端は自分にあるから誰をも責めることはできまい。世界文化社さん(ぼくとしては、ナンシー関をブレイクさせた偉大な版元。他にも良書いっぱいだけどね)が研修に派遣してくださったこのフリーペーパーの編集長、新入社員の村石さん。わたしクラスの目利きになると、出版人として将来有望か、そうでもないかは、なんとなくすぐにわかる。彼女が前者であることは、店にきて4、5分くらいでわかった。なぜか。
 あっとゆう間に一通り、作業をこなせるようになってしまい、とくに教えることもなくなっちゃったので、自分が編集しているフリーペーパーを「どや?」といわゆるドヤ顔で見せ示してみた。そして編集志望なんだし、こんなの研修中に作ってみれば?と適当なハッパをかけたら、そのハッパを真剣に浴びた村石さんは、ある意味タチがわるい。ある意味とは、つまり「良い意味で」ということだ。
 研修生の存在は毎年四月の書店の風物詩だ。職場を共にできるのは、長くて二週間。このわずかの間に多くのことを学びとってほしいと我々はおもっているし、彼等もそう願っているはずだ。ところが気がつけば、雑用しか頼めなくて、それをただこなすことしかできないような状況に陥っていることがある。それはお互いに不幸なことだ。どうせならクリエイティブなことをしてもらいたい。
 我々には「出版文化を盛り立てる」という共通の目的がある。そのツールとしてフリーペーパーは有効なのか?村石編集長には、この挑戦的な試みを通して「とにかくやってみる」というファイティングポーズをきめてもらいたい。

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