二人のカフェ

どこにも行きたくないような気分のときに
ベコカフェに行くといい。
本を読みおえたら行くといい。
私の友人二人がやってる店だよ。
二人はもともと私と同じ職場で本を売っていた。
増床にともなうスタッフ増員があり
同じくらいいのタイミングでバイトをはじめた。
とてもいい時代だった。
なんて言いだしたらもう人生下り坂か。
西荻で一人住まいをしていた私は
ホームパーティーに憧れていた。
そもそも一人で部屋を借りようと決心したのは
その実現への第一歩だった。
ホームパーティーは一人ではできない。
招く相手が必要だ。
二人はその格好のターゲットになった。
もう何人か時を同じくしてバイトをはじめた者を含めて
鍋を囲んだり大量のパスタを茹でたりして
さまざまな口実を設けては宴を用意した。
やがてその部屋を西荻城とよぶようになった。
二人が店をやめてカフェをはじめるときいたときに
単純に「なんで?」とおもったことを思い出す。
ワタナベくんは本屋をやるのかとおもってたからだ。
次第に二人はカフェの人になった。
ベコカフェで印象深い出来事はたくさんあったが
ここでは全て割愛だ。
打ち明けると当初私はベコカフェに西荻城の後釜を期待した。
その部屋を引き払う段になりそれを切望した。
結果的にそうはならなかった。
二人はみんなのもう一つの場所をつくった。
ありがとう。ベコカフェ。
おつかれさま、ワタナベくんとサトウさん。

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