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夕方になっても、残暑は残っていた。太陽が沈みこもうとしていた. 市内の中心部から少し外れ、住宅地と田畑とが点在する万丈川の堤防近くに、堤防に沿うように、四階建ての社宅が立っている。社宅の、通路に並んだ一階の隣同士の玄関は開け放たれたままで、片方から、小林真致子が出てきて、隣に住む野々下良枝に声をかけた。 「良枝さん。ちょっとお買物に行きたいの。いいかしら?」 「いいわよ。いま眠っているの」 「ミルクあげたばかりです。ミルクを飲みながら、眠ったんです。二時間