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青の彷徨 前編

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昭和の末期、全国の医薬品卸は300社ほどあったのが30社ほどに収斂されていった。異常な慣習や滑稽な日常があった。その中を必死に生き抜いた男の姿を描きたい。
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#院長

青の彷徨 前編 3

周吾は別の話を思い出した。京町薬品大幹部の武勇伝である。 今、会長になっている長村昭氏が現役の社長時代のことだ。長村社長は、話がうまく、誰でもすぐ楽しくさせる天才であったが、長く飲んでいると、悪い酒癖を持っていて、もうこれから先は危ない、と部下が判断したら、社長、時間です、と強引にお開きにするのだ。部下から、時間です、と言われると、正しく理解し、うまい具合に話をまとめて切上げられる。この判断能力のある段階で、時間です、を部下が教えなければいけない。この時