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青の彷徨 前編

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昭和の末期、全国の医薬品卸は300社ほどあったのが30社ほどに収斂されていった。異常な慣習や滑稽な日常があった。その中を必死に生き抜いた男の姿を描きたい。
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#ショパン

青の彷徨  前編 14

 周吾は、十二月二六日に、中根医院の棚卸を済ませ、二八日には、会社のコンピューターのLANPLANに入力、棚卸表を完成させ、中根医院に届けた。いつも訪問する時間だったが、先生は不在だった。  空白の時間ができた。このあと森山医院へ行くが、かなり早い。周吾は野崎医院へ行ってみようと思った。中根先生と何度か一緒に行った。市内で一番遠く、取引のないところ。取引を開始させよう、なんて気は全くない。自分に暇ができたからだ。   野崎医院に着くと、周吾は手ぶらで入って行く。仕事で来たので