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【日本一「死刑」を知る男、斎藤充功が語る】死刑囚の信じられない話


齋藤充功(さいとう みちのり) 1941年東京市生まれ。ノンフィクション作家。東北大学工学部を中退したのち国際機械振動研究所に勤務。73年退職しフリーに転身。これまで近現代史、犯罪者、刑務所事情といったテーマを中心に取材・執筆を行い著書の数は40冊以上にも及ぶ


報復からの執行か


ーー死刑囚に関する取材を積極的に始めたきっかけはどのようなものでしたか?

「今から40年前の月刊『宝石』(光文社)の特集が最初だね。編集長から君は死刑囚に興味があるようだから『栃木雑貨商一家殺人事件』(注1)の菊地正を徹底的に追跡して、実際に死刑を執行した人や教誨師、あわよくば加害者遺族にも取材してみろと難題を突きつけられてね。昭和30年頃、菊地が東京拘置所を脱獄した後、再逮捕され上告棄却からわずか147日と異例の早さで死刑執行された事件なんだが、当時、全国的には死刑囚の脱獄は何度もあったんだけども、帝都東京で死刑囚が逃げたのは空前絶後。東京中の火が消え夜など人っ子一人歩かなかったくらいで、しかも脱獄を東京拘置所当局が知ったのは翌朝なんだよ。

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