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ルポライター安藤海南男 「さよならマスゴミ」#3 ある「嫌われ刑事」をネタ元にした私(前編)

 みじめな気分だった。

 7月某日、羽田空港。さっき別れのあいさつを交わした男の背中を見送りながら、なんとも言えない不快なものがこみ上げてくる。初めての感覚ではない。かつて何度か味わい、脳の深層に刷り込まれて消えない記憶だ。私は、思わず、出発口の手荷物検査場に消えていく男から視線をそらしてしまった。
 
 すでに古希を迎えたその男、Kは、かつて警察官だった。贈収賄や選挙違反、詐欺などの知能犯を扱う「捜査2課」の畑が長い男には、新聞記者時代、随分と世話になった。いわゆる「ネタ元」だった。飲みに行くたびに口にするのが、「オレは市長を挙げた」という現役時代の自慢話だ。20年近く前、ある地方公共団体の首長選を巡る違法献金疑惑が発覚。政党への正規の献金を装った資金を受け取ったとして市長や国会議員秘書らを逮捕した事件で「班長」として捜査を指揮を執ったのがKだった。

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