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葬儀社の9割はぼったくり!?誰も知らない「葬儀の値段」と「0円葬儀」を実現する方法

高齢化の次に訪れるのは多死社会。では、自分が葬儀をする番となったらどんなことに気をつければいいのだろう。『DIY葬儀ハンドブック』の著者が葬儀にまつわるお金のすべてを解説。タダですませる方法もーー

葬儀社の9割はぼったくっている!?

 どんな人間にも平等に訪れる死。特に肉親の死は辛く、悲しいものである。しかし、嘆いているだけではいられない。死の瞬間から煩雑な死後の手続きは始まる。
「葬式にはどれぐらいお金がかかる?」「死んでからの役所の手続きが初めてでよくわからない」「葬儀屋はぼったくられるって聞いたけど……」。きっと誰しもが慣れないことに心配の種はつきない。
 近年、高齢の親が自宅で亡くなり、放置をする子どものニュースを見かけることも多くなった。さらには著者が取材した中小葬儀社社長はおそろしい事実を告げていた。

「葬儀社の9割はぼったくっています。例えば、葬儀をする会場費は無料とうたっても、控室代を10万円請求するなど手口は巧妙です。病院、警察付きの葬儀社は、バックマージンがあるので、葬儀代は相場より高額になります」

 消費者としては、葬儀の流れと相場を知り、請求書の内訳を細かくチェックして、交渉する、もしくは良い葬儀社を見つけるしか自衛手段がない。今回は、もし、自分の親や親戚が亡くなってしまったとき、自身はどのように手続きを進めればいいのか。そして、いかに葬儀を安くすませられるかのポイントをお伝えしたい。

葬儀の平均額はなんと180万円以上!

 現在、葬儀の平均的な料金はいくらなのだろうか? 葬儀ビジネスを手がける鎌倉新書のデータによると2017年時点で178万2516円。内訳は葬儀費用約117万、飲食費約29万、返礼品約31万となっている。景気を反映してか2013年のデータより総額15万円以上も下落し、お金をかけない葬儀が広まっていることがわかる。
 とはいえ、葬儀社に払う費用だけで100万円以上だ。これをタイトルのような0円葬儀に近づけるにはどうすればいいのだろうか。

 まず、葬儀の種類と予算規模について説明する。葬儀には費用が廉価な順に「直葬」「家族葬」「一般葬」がある。
「直葬」は亡くなった場所から安置できる場所(自宅や安置所)に運び、24時間が経過後、火葬場で焼く形式だ。葬儀社に頼むと15万円から30万円程度の予算となる。
「家族葬」「一般葬」では、参列者が10名ほどからで、通夜、告別式もあり、遺体は搬送業者が運んでくれる。自分ですべきところは、参列者への連絡や、受付などの確保。葬儀社に頼むと最低60万、人数が多ければ数百万円の費用がかかる。
 さらに仏式葬儀には僧侶による法要が一般的だ。お布施は20万円〜40万円が相場。さらに戒名を付けるなら戒名料は宗派によるが30万円以上とされる。先祖代々続くお墓のある菩提寺がなければ、僧侶・法要をしないのもひとつの手だ。
 もうひとつ葬儀費用の多くを占めるのが、通夜、告別式。「直葬」では、それすらも省略するので、30万〜40万円は浮く。ただ、自分の家でするならばそれほど難しくはない。40年ほど前までは、自宅での葬儀は珍しいことではなかったのだ。

葬儀にかかる費用の変化
2013年 202万9020円
2015年 183万9735円
2017年 178万2516円

※鎌倉新書調べ

「DIY直葬」なら3万円で済むことも

 では、次に具体的な死の手続きの費用を解説してみよう。
 厚生労働省のデータでは、2014年時点で死亡した場所は、80%の方が病院、12%が自宅、5%が介護施設となっている。
 病院や介護施設では、数千円ほどで医師から死亡診断書がもらえる。自宅でもかかりつけ医がいれば可能だ。ただし、交通事故や不慮の死だと、警察の検案があるので少々やっかいな上に死体検案書には数千円から数万円の費用がかかる。この死亡診断書、死体検案書がなければ、火葬場にいっても火葬の許可が下りないので、この費用は必ずかかってくる。なお死亡診断書は役所、銀行、保険会社などで使うので多めにコピーをしておいたほうがいい。

 東京23区内で火葬をする場合どれほどの費用がかかるのだろうか。葬儀社に頼まない場合、自分で用意するものは棺桶(約3万円)と骨壷(約1万円)だ。それに火葬費用(公営で約5万円、民営で約6万円)の合計10万円がかかる。
 だが、故人が国民健康保険もしくは後期高齢者医療制度に加入していれば、自治体に申請することにより「葬祭費」が支給される。東京23区の場合は7万円(自治体によって違うが1万円〜7万円ほど。だいたい火葬費用と相殺される)。国保以外の健康保険では「埋葬料」という名目で5万円程度が支給される。実質、DIY(Do it yourself=自身ですべてをする)で火葬にして遺骨を引き取るだけなら、3万円ほどの予算ですむ。

 もし、棺、骨壷の料金も惜しいのなら、メルカリ、ヤフオク、ジモティーなどの個人売買サイトがある。特にジモティーでは、過去に棺桶、骨壷が0円で出品されたこともあるので、中古でも気にしない方には好都合だ。

遺体処置はプロに頼もう

「葬儀をDIYでする」。その中で一番難しいのが、遺体の処置、搬送、安置だ。遺体の処置とは、体液や排泄物の流出、腐敗を防ぐために口や肛門などの穴に脱脂綿を詰める作業となる。病院でしてくれる場合もあるが健康保険の範囲外で自費となり、数千円から数万円がかかる。かといって、自身の肉親の鼻にピンセットで15センチも綿を詰めるのは、精神的にかなり辛いに違いない。ここは著者もプロの手を借りることをおすすめする。

 そして搬送・安置も個人では難しい。病院や施設で亡くなると、法律上死後24時以内は火葬不可だ。都市部では、火葬場が混んでいて1週間待ちもありえる。病院や施設からは死後数時間から半日での退去を求められる。
 それでもDIYで搬送をするならば、遺体を入れられる大型のワゴン車、車の汚れ防止のビニールシート、遺体を運ぶ防水シーツなどを用意しよう。自分で遺体の搬送をする人は少数派なので、事前に病院や施設に伝えておくべきだろう。
 通常の体型の遺体であれば、大人2名で持つことが可能だ。頭と体をなるべく平行に保ち、遺体を車に乗せたら、しっかりと固定するか、隣で遺体を見守ってほしい。口から水分や薬、点滴の穴から血液などが吹き出すこともある。
 警察などで検視をした遺体は、ひどい状態のときもあるので自分での引き取りは勧めない。自分ではできないと思ったなら、搬送部分だけを業者に頼むこともできる。その場合10km=2万円ほどが相場である。

 自宅、もしくは安置所にて遺体の保管はできる。自宅ならば、1日10kg(5000円〜)からのドライアイスが欠かせない。安置所は葬儀社や斎場、遺体ホテルなどで、1日1万円の予算をみたほうがいいだろう。
 ほかにも死化粧(エンゼルメイク)、火葬場の予約、遺体の服の着せ替えなど、ハードルの高い作業はまだまだある。だが、自分の手と一部はプロの手を利用したとしても、数百万の葬儀費を数十万に抑えることはできる。

『DIY葬儀ハンドブック』(駒草出版)では、葬儀の流れ、細かい部分の値段・方法だけでなく、ぼったくり葬儀業者の見分け方や納骨の仕方まで解説している。悪質な業者につかまることなく、故人のためにきっちりとお金を使い、満足できる見送りをしてもらいたい。著者自身も40歳のときに73歳で父を亡くした。これからの40代、50代、60代には他人事ではないはずだ。ぜひとも参考にしてほしい。

参考文献=厚生労働白書(平成26年版)

業者に頼らず、できる限り自らの手で葬儀を行うための方法をまとめた
『DIY葬儀ハンドブック』(松本祐貴・著/駒草出版)

著者プロフィール
松本祐貴(まつもと・ゆうき)
1977年、大阪府生まれ。フリー編集者&ライター。雑誌記者、出版社勤務を経て、雑誌、ムックなどに寄稿する。テーマは旅、サブカル、趣味系が多い。著書『泥酔夫婦世界一周』(オークラ出版)『DIY葬儀ハンドブック』(駒草出版)。新刊に編集として関わった『これからの時代を生き抜くための生物学入門』(辰巳出版)五箇公一著。