日々是暴食★トラウマめし【第21食】キューバ人が大好きな「炊き込みご飯」とヘミングウェイの愛した酒
2015年キューバへ旅行に行った。映画『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』を観てからずっと行ってみたかった国で、ちょうど15年はオバマ政権により半世紀ぶりにアメリカとの国交が正常化してがぜん行きやすくなったタイミングだった。(その後トランプにひっくり返されて経済制裁が復活)
他方で一気に資本主義がなだれ込んでくることによってキューバらしさが失われてしまうのでは、と思っていた。これはフィデル・カストロがまだ存命なうちに(2016年90歳没)に行っとかないと。フィデルの目が黒いうちはハバナにマクドナルドやケンタッキーが建ち並ぶことはないだろう。というわけで2015年の秋に遅い夏休みをとって行ってみた。
社会主義国らしい、長い長い入国審査を終えて空港を出たらもう夜だった。大柄なタクシーの運転手を見つけて、今日の宿と飯が食える店を探していることを伝えると「まかせとけ!」って感じで車を飛ばしてオールドハバナの海岸に近い「カサ」と呼ばれる民宿を紹介してくれた。
「カサ」はスペイン語で家のこと。ハバナでは政府に許可をもらい民泊をしている家がたくさんあるそうなのだが、運ちゃんに紹介してもらったカサは大当たり。気のいい女将さんとおばあちゃん2人で切り盛りしていて、とっても親切。バスの乗り方から、美味い朝飯を食える場所から、色々と紹介してもらい飛び込みだったが3連泊した。(たしか一泊で3~4千円くらい)
夜中でもやっているレストランを紹介してもらった。生バンドがステージで演奏するスタイルの、たぶん現地では高級店。メニュー表を読んでも言葉が分からないので、白い衣装を着たウエイトレスさんにとりあえずオススメを頼んでみた。
やってきたのは全体的に茶色い料理。うーん、微妙。ポテトフライ、バナナの揚げたもの、あとはたぶん魚のフライと何かの肉。味はよく覚えていないが、白ワインで流し込めば何でよかった。ダンサーのサルサダンスをまったり見ていたら、最後はフロア中のお客さんが立ち上がって、みんなでイッツ・ダンス! これは楽しい。さすがラテンの国。老若男女、国民全員パリピじゃん。しっかりと酔っ払って宿に帰って寝た。
さて、モヒートやダイキリなどおいしい酒が揃っている一方で「キューバのめしは不味い」とよく言われる。宗主国だったスペイン料理の影響を受けているが、正直まったく洗練はされていない。長きに渡る経済低迷の影響もあるが、その料理はどれもシンプルで素朴。まあ仕方ないでしょう!
翌日、ハバナの歓楽街をぶらぶら歩いていると屋台っぽい店でチャーハンのようなものを売っていたので購入。キューバは米が主食でアロス・コングリという黒いんげん豆の炊き込みご飯が有名だが、これはたぶん豆ではなく鶏肉や野菜の炊き込みご飯だったと思う。塩気があって喉が渇くがビールで流し込めば最高にあう。値段も覚えてないが数十円くらいの激安だったはず。
キューバは長らく外国人むけの兌換ペソ(CUC)と国内むけのペソ(CUP)という二重通貨だったが、最近CUCが廃止され一本化されたらしい。現場はいささか混乱しているようで、旅行者が闇レートの両替商とのやり取りに辟易する動画をYouTubeで見た。私が訪れた当時のキューバはまだまだ牧歌的で、CUPの紙幣を手に入れて人民向けの安食堂でも食事していたが、どうも観光業が発展して訪れる人が増えているうちにグチャっとしているらしい。
オールドハバナの竹下通り的な場所、オビスポ通りの一角にあるバー「ラ・フロリディータ」はヘミングウェイが通っていた店だ。大好きだったというラムを使ったフローズンダイキリに大盛り「パパ・ダブル」とモヒートを飲んでヘロヘロに。真っ昼間から飲み歩いても治安がいいから全く問題ない。他の中南米諸国なら強盗にあっても文句は言えないが、キューバはお上に管理された社会主義だから治安はいい。しかしみんなラテン系という変な国だ。素晴らしい。
ブエナビスタのコンパイン・セグンドの名言が頭に浮かんだ。「人生で素敵なものは、女と花とロマンス」。確かにキューバには全部ある!
<続く>