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日々是暴食★トラウマめし 【第4食】葬送のカレーと新年のマトン焼き

聖なる川へ巡礼

 ネパールの玄関口、カトマンズのトリバブン国際空港のすぐそばに、パシュパティナートというネパール最大の聖地がある。シヴァ神を祀るヒンドゥー教寺院は巨大で、1500年ほど前から巡礼の地となっている。

国内最大のヒンドゥー寺院、パシュパティナート
サドゥーと呼ばれる修行者もたくさん

 そのパシュパティナート最大の見せ場は、なんといってもバグマティ川に隣接した火葬場だろう。敬虔なヒンドゥー教徒は、亡くなったあとこの火葬場で燃やされ灰を川に流されることを望んでいるそうだ。バクマティ川はインドの聖地バラナシを流れるガンジス川につながっている。死者はヒマラヤから湧き出た水に流され大河を通り、はるか南まで旅をしてやがて海へとたどり着く。

寺院には土産物屋が立ち並んで賑やか
川沿いのガートに設置された火葬場

 バラナシの火葬場は撮影禁止だが、パシュパティナートは約1000円の入場料を払えば誰でも入れて撮影自由。なのでいつも多くの旅行客で賑わう一種の観光地となっているのが特徴だ。火葬場の向かい岸には、ガートと呼ばれる沐浴用の階段状の場所がある。バラナシのガートは数キロにもわたる巨大なものだが、ここはごく小規模。ガートに座りながら葬送の様子をボーっと見つめる。

朝からどんどん遺体が燃やされ煙がのぼる

 白い布でくるまれた遺体は赤やオレンジの鮮やかな花で覆われている。遺族に担がれて運ばれてきた遺体は、まず川を流れる聖なる水で清められる。小さい川なのでその水の色はバラナシ以上に汚いが、れっきとした聖水なのだ。火葬台に設置されると囲んだ木に火がつけられ燃やされていく。完全に燃え尽きるまでけっこうな時間を要すようだった。職人の手によって滞りなく火葬処理が済むと、白くなった遺灰はそのまま川にボトンと落とされる。これで終わり。

遺族たちが遺体を担いでやってくる
遺体はまずバクマティ川の聖水で清められる
火葬された遺灰はそのまま川に流される

輪廻転生でめぐるカルマ

 インドやネパールの多くの人々は、死んだらまた生まれ変わると信じている。どうせ生まれ変わるんだから墓は不要。彼らにとって現世は永遠の循環の中の、たかだか数十年の仮住まいに過ぎない。だから一旦役目を終えた仮住まいの肉体は燃やして川に流せばいい。

 これが輪廻転生というやつで、ヒンドゥー教においてはアートマン(永遠の自我。霊魂みたいなやつ)は死んでも消えることはなく、生まれ変わった別の身体で生き続けると信じられている。悪い行いを行うとその業(カルマ)は次の身体に受け継がれて酷い目に遭うとされる。

 その強く信じられている輪廻の感覚が(前世で悪いことをしたものは次の世でも罰を受けなければならない)カースト制という悪習がはびこる原因だったりするのだが…これが難しい。ちなみに仏教の輪廻はヒンドゥーとは全然違うのだがややこしすぎるので置いておく。

花飾り、炭、色々なものがゆっくりと流されていく
川沿いには物売りのおばちゃんたちが

 個人的には燃やして川に流す葬儀方法は最高だと思う。だから自分が死んだらぜひ川に流してほしい! 

 母なる大河ガンジスじゃなくて会社の前の神田川でもいいし、地元の北上川でもいい。ていうかドブ川でも何でも、どこでもいい。映画『復讐するは我にあり』のラストシーンみたいにバーッと散骨するの、あれ最高。輪廻したら次は何になるんだろう? 悪食カルマを背負っているので、豚やカエルに生まれ変わり見境なく目の前の物を喰らい散らかすかもしれない。

寺院を一歩外に出ると喧騒につつまれる

激辛なカレーセット


 さて、そんなカルマが発動して腹が減った。こちらはまだ生きている、食べなければ空腹で倒れてしまう。寺院を出てすぐの道を渡った食堂にフラっと入った。しかし困った、メニューに英語表記がないガチローカルな店だった。とりあえず隣のテーブルの皿を指差して「セイムカリー、プリーズ」。そんな調子でなんとなった。

ローカルなレストラン。参拝客でいっぱい
適当に頼んだカレーセット。かなり辛め

 プリ(揚げパン)、ダルカレー、謎のスイーツがワンプレートに盛られたセットがきた。シャバシャバ系のカレーはスパイスが効いていたかなり辛い。思わずジュースを一気飲みした。逆にスイーツはとんでもなく甘い。甘い黄色い汁にパンのようなものがひたされていた。辛いと甘いで中和させよう作戦なのだろうか? 舌がヒリヒリしたまま会計を済ます。覚えてないが2、300円だろう。

激甘なスイーツ。砂糖がガツンとくる

どんちゃん騒ぎのカトマンズで豪華めし

 大晦日だったのでカトマンズ市内で年越しをした(コロナ前の2019年大晦日)。タメルは若者でごった返し、そこら中で飲めや歌えの大宴会。電気を使いすぎて度々停電していたが、十数年前はこんなもんじゃなかったので電力事情は少しずつ良くなっているのかもしれない。

年越しイベントで賑わうタメル地区

 マトンを丸焼きにしているレストランがあったので、せっかくだから入ってみた。ネパールではマトンといえばヒツジではなくヤギを指すのが一般的なので、たぶんヤギだろう。よく脂がのって美味い。

 ターキーも頼んでみた、これは額面通り七面鳥なのか? こちらも焼き立ててスモーキーさがあっていい。ビールも飲んで3千円くらい、高い。まあ新年だしケチってもしょうがないか。

豪快なヤギの丸焼き
七面鳥? はやや歯応えがあるがジューシーで美味かった

 ハッピーニューイヤーとなったところで宿へ帰ることにした。明日は午前中に出国だ。部屋で1人飲みしながら紅白の結果をチェック。『笑ってはいけない』も見ようかと思ったが弱々Wi-Fiで無理だった。寝る前に昼間のパシュパティナートを思い出した。輪廻ねえ、、、できれば解脱したいけど生きている間に悟りを開くのは無理そうな気がする。ともかく涅槃目指して頑張ります!

飛行機から見たカトマンズ市内。また行きたい!

ネパール編〈了〉※次回ロシア編へ続く

【写真・文】バーガー菊池
岩手県出身。花巻東高校卒。 実話ナックルズ編集部在籍の編集者。不良からエロまで何でもやります精神の何でも屋。注射を打ちながら毎晩暴飲暴食を繰り返すハゲ巨漢。

https://twitter.com/kikuchi_BURGER