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頂き女子りりちゃんに大金むしり取られる中年男性は、恋愛詐欺だと気づかない…地獄みたいな現実を解説します【中村淳彦の名前のないコラム】

逮捕でいまや時の人となった頂き女子りりちゃん、前回コラムではその手口をお伝えしましたが、今回は被害者たちに共通する特徴を解説します。中村淳彦さんは「被害男性の多くは騙されていることに気づいていない」といいます。だから今後も、同様の事件はなくなることがない、と警鐘を鳴らすのです。

 ノンフィクションライターの中村淳彦です。
 団塊ジュニア世代がパパ活女子たちに恋愛詐欺でむしり取られているみたいな話は、繁華街のマニアックな話だったはずが、いつの間にかめちゃめちゃ大きい社会問題になっている。りりちゃん逮捕報道が想像を絶するほど大きかったのですね。
 りりちゃんはホス狂いからパパ活を始めたんだけど、ホス狂いは本当に上限なしのお金を貢がなきゃいけない。パパ活の前は風俗嬢とかやっていたみたいだけど、風俗嬢みたいなサービス業よりも金持ちおじさん相手のパパ活の方が、店とか紹介者に間のお金を取られることもないし、自分の頑張り次第で売上に上限もない。まず、中間搾取を嫌うZ世代とパパ活の相性がいいんですね。
 りりちゃんは金持ち相手のパパ活もしていたけど、団塊ジュニア世代の生涯未婚率が爆上がりして、恐ろしく寂しい思いを抱えている、モテなくて女性慣れしてない、どうしようもないジジイがアラフィフに山ほどいるってことに気づいた。そういうオヤジはあまりにも寂しいから、若い子と会話するだけで喜ぶ、それで恋愛詐欺みたいなことを思いついた。簡単にお金を引っ張れるってことに気づいて、それを情報商材にしてみんなに伝えたわけですね。

中年男性からおよそ2700万円をだまし取ったとして逮捕されたりりちゃんこと渡辺真衣容疑者(25)
(画像はりりちゃんYOUTUBEより)


頂き女子たちはおぢのことを「虫」みたいに思っています


 僕たまたま、りりちゃん信奉者のパパ活女子、頂き女子たちのLINEグループに女性の名前を使って入っている。ただ見てるだけだけど、りりちゃん逮捕にみんな憤っている。りりちゃんを悪者にする社会や警察に対して「ふざけるな!」って憤っていて、りりちゃんがなかなか重い罪になることに衝撃を受けてはいるけど、「危ないからやめよう」という声はありません。
 そのLINEグループは活発に情報交換がされていて、りりちゃん逮捕前は「こういうおぢからどうしたらお金を引っ張れますか?」みたいな相談を誰かしらが投げると、誰かが「こうやって引っ張りなよ」みたいなアドバイスをする。そういうグループだった。
 年齢的にはおそらく、19〜24歳ぐらいの女の子。文面だけでも若い子とわかるけど、女の子同士ではちゃんとしてるというか、礼儀正しくふざけたことは言わないんですね。丁寧なちゃんとした言葉で女の子同士で会話をしている。それが「ジジイ」とか、「オヤジ」とか「おぢ」とかそういう単語が出てくるといきなり口調が変わる。
「○○ですよね?」「○○頑張られているんですね」「こうしたらどうですか?」っていう普通の会話が続いていても、いざオッサンの話になると、「ジジイのくせにこんなこと言っている」「おぢのくせに偉そうだ」とか、そんな感じになるわけです。女の子たちは親世代の中年男性のことを、おおよそ団塊ジュニア世代あたりのことを、「ジジイ」とか「おぢ」とかって呼ぶんだけれども、同じ人間として見ていない。なんていうのか、虫とか、そんな感じ。

 そのLINEグループ、女の子が数百人いて、もう全員の総意として「恋愛詐欺は犯罪行為だけど、中年男性のおじさんからお金を奪い取って何が悪い?」という感じです。おじさんがかわいそうだとか、気の毒とか、傷つけちゃいけないみたいなことは、まったくないんですね。りりちゃんが逮捕されても、オヤジからお金を盗るのはやめようという意見はゼロでした。
 どうしてそうなってしまったかと言うと、おそらく、その寂しいオヤジたちが「本当に喜んでいる」ってことだと思う。女の子たちがりりちゃんの真似して優しい言葉をかけたら、本当に尻を振ってジジイたちが喜ぶ。本当にオヤジがガチ恋状態に陥って、本当に「大好き」みたいになるわけです。女の子たちはただ言葉を仕事として投げているだけ。なのに、それで本当に心から喜んでガチ恋状態に陥るから「なんて哀しい連中だ」みたいな感じなのです。
 寂しすぎてすぐにガチ恋状態に陥るから、頭のなかは猿以下の、虫みたいな意識なのでしょう。女の子たちは寂しいオヤジをLINEの言葉だけで操って、自分の思うがままに金を振り込ませるように風に育成する。ゲーム感覚なのです。
 簡単に騙されないまともなオヤジももちろんいる。たまにそういう女の子たちの動きに気づいてしまうオヤジもいて、そこで女の子たちがお金を盗れないので悩んでLINEグループに相談の投稿をする。そうすると、「ジジイのくせに偉そうだ」とか「なんでそうそういう態度取るんだ」みたいなコメントがついて、「そんなジジイは切っちゃいましょう」ってことになる。面倒くさいジジイは切っちゃって、素直ですぐに金を出すジジイにいきましょう、みたいな感じでアドバイスするわけです。

恋愛詐欺だと指摘されても「俺の彼女だけは違うから」と…

 オヤジたちは中学生くらいから、女性に相手にされなくて何十年と寂しい思いを抱えている。いま50歳だったら35年間ぐらい女性に相手にされないで生きている。そうなってしまうと、認知が歪むというか、ちょっとおかしくなっちゃう。そういうオヤジに「女の子がやっていることは恋愛詐欺で、アナタは騙されてお金取らてるだけだから、お金を振り込むのもやめなさい」って話したとしても、ほとんどのオヤジは「俺の彼女はそういうのじゃないから」「俺の彼女は全然違うから」「本当に純粋な子だから」みたいなことを言う。被害者が被害に遭っていることに気づいてないから、やり放題なのです。
 モテないオヤジには本当に変なのが多い。たとえば女の子とLINEを3往復ぐらいしたら、もう「彼女」になったりする。それで仲間のモテないオヤジに「俺、彼女できたから」とか「彼女、19歳」とか言っている。僕も介護現場で何人かそういう奴に遭遇したことがあるけど、「あなたね、それ世間では彼女って言わないから、ちょっと冷静になった方がいいよ」って言っても、「なに言ってんだ貴様は!」みたいな感じで逆ギレして、会話にならないわけです。
 モテないオヤジ、寂しすぎて認知がおかしくなっているオヤジは、どんな被害にあっても被害に気づかない。だから、オヤジ相手の恋愛詐欺はどうしてもなくならない。りりちゃんが逮捕されても、類似の情報商材は次々と出てくるでしょう。加害する女の子も、増加の一途だと思います。
 ちゃんとした金持ちで社会的地位のあるオヤジを相手にして、そこからお金を分けてもらう一般的なパパ活もあるけど、生涯未婚率が3割近くなってしまって、認知が歪んでいる寂しいオヤジはなんでも言うことを聞くので金引っ張り放題。やっぱりパパ活でセックスを売るよりも、遥かに楽なので合理的にお金になってしまう。しかも被害者が被害に気づかないので、この犯罪はなくならないし、拡大の一途となるのは確実なわけです。
 りりちゃんの存在はつい2年ぐらい前までは、本当に歌舞伎町のマニアックな話だった。だけど、今こんなに大ニュースになってしまって「そんな美味しいことがあるんだ!」って気づく女の子も出てくるだろうし、りりちゃんを逮捕しても恋愛詐欺が縮小にすることは間違いなくないわけです。

 団塊ジュニア世代のオヤジは、どうしてこんなことになったのか。簡単に話すと、我々の世代は、特に私立校に行ったら、男子校と私立の女子校で男女別れていて、女性と付き合う、不純異性交遊はいけません、みたいなことを徹底された管理教育で育った。男子校の中で真面目に過ごすと、中学高校の6年間、もしくは高校の3年間を、全く女子と会話しないで女っ気ゼロの中で過ごす。
 そのなかで、女子とうまくコミュニケーション取れる人たちはせいぜい2、3割。その2、3割は女子とうまく交流することはできるけど、それができなくて、真面目に先生の言うことに従った7、8割は、大学行ったり社会に放り出されると、どうしても女性とうまく話せない、女性が苦手っていう人がめちゃめちゃ多くて、そういう人たちがこじらせにこじらせて15歳から35年間、女性とうまく話すことなく50歳になってしまった。それで、今パパ活女子たちの餌食になってるっていうことなんです。

 数年前、介護系の中年童貞の友人がいた。いたっていうのは相手が逆ギレしてブロックされて縁切られちゃったけど、僕の3歳ぐらい下だから、今48歳ぐらい。彼はアルフィーが好き。アルフィーの「恋人達のペイヴメント」っていうヒット曲があって、あとサザンオールスターズの「真夏の果実」、その2曲を30年以上に渡ってずっと聴いていた。将来の恋人と幸せな暮らしを30年間以上も夢見ているけど、何も変わらぬまま、その2曲を30年以上聴き続けたことで、50歳近くになった。女性関係が何もないわけですね。
 それが一度だけ、優しくしてくれる女性が現れた。優しい若い女性とどこかの掲示板で知り合って、別の掲示板に移ろうよって言われて、誘われるままそっちの掲示板に移った。そうしたら有料コンテンツをバンバン買わされて、親の遺産の全財産300万円を一瞬で失ってしまった。
 彼が女性と接触したのは、熱望しながら30年間でそれだけなんですね。30年間夢を見続けて、女性と接触できたのは詐欺にあった1回だけ。そういう人がアラフィフには山ほどいる。これはどうしたものかなと、本当に思いますね。
 ちなみにその友人だった彼に「女性ってのはこうだよ」みたいなことを伝えたら、激怒して縁切られました。りりちゃんたちに何百万、何千万円と奪われてしまうのは、そういう人たちなんですね。

<著者プロフィール>
中村淳彦(なかむら・あつひこ)
ノンフィクションライター。無名AV女優インタビュー『名前のない女たち』シリーズ、『東京貧困女子。: 彼女たちはなぜ躓いたのか』、『悪魔の傾聴』などヒット作多数。花房観音との共著『ルポ池袋 アンダーワールド』(大洋図書)が絶賛発売中。Voicy「名前のない女たちの話」日々更新中!https://voicy.jp/channel/2962