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“父親”独占告白「デマをマスコミが垂れ流した」ーー安室奈美恵母親殺害事件(ライター・根本直樹)

静かな集落に
響いた殺意

12月半ばのある日の昼下がり。辺りはしんと静まり返り、陰々とした空気が立ち込めていた。空を見上げると鈍色の雲から小雨が落ちてきて、強風が唸りをあげはじめる。人のいない、走る車もまばらな旧国道沿いをうろうろしていると、朽ちかけた琉球家屋の窓から、生気のない、皺くちゃの顔をした老人がこちらをじっと凝視しているのに気づき、ぎょっとした。

那覇から北へ90キロ。名護市を抜けて、車で30分ほどさらに北上すると、日本一の“長寿の里”として知られる国頭郡大宜味村に着く。人口はおよそ三千人。西は東シナ海に面し、背後には低い小山がいくつも連なる“やんばる(山原)”地帯。喜如嘉という人口450人程度の小さな集落だ。

1999年3月17日、ここでひとりの女性が轢き殺された。

安室奈美恵の実母・平良恵美子(当時48)である。それまで恵美子は数週間、娘・奈美恵の世話のために東京に滞在していたが、事件前日、沖縄に戻ってきたばかりだった。

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