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(タイトルなし)笑壱朗【ナックルズ文芸賞 受賞作品】

第1回(令和5年)ナックルズ文芸賞
『日本統一賞』受賞作品

タイトルなし
笑壱朗(しょういちろう)


 令和元年11月13日、「フィリピンで詐欺グループ36人逮捕」こんなニュースを覚えているでしょうか?
 この中に、未成年が2人その1人が私です。
 この日から、私が強制送遠される令和3年7月15日までフィリピンでの拘束期間に起きた数々の事を抜粋して語りたいと思います。

 逮捕の瞬間は、武装部隊が突入してきて現場に居た約80人がその場で拘束を受けました。
 現場の、隅に拘束者が集められ皆一人一人手を縛られ地べタに座っている状況で、アサルトライフルの銃口が四方八方から向けられている為下手に行動が出来ませんでした。
 数時間後に、2人の大使館員とパスが到着し1人の職員(日本人大使館員)に見覚えがあり「ほぼ、毎回キャバクラで見かける人だ」と、すぐに思い出した。

 すると、職員が既婚者や女性などを多数釈放しだし、犯罪者を逃がしていった。
 後に、知ったのたがバスの定員合せで釈放されたと知り、連行時のバスは定員ジャストで乗っていた事は今もハッキリ覚えている。
 ニュースでは、釈放された人達も写っており明らかに36人以上の人が居ると分かる筈だが、不思議と気ずかないものなのだろうか。
 未成年で、私だけ顔出しされたりもしてる。

 その後は、収容所に列着し入所するのですが入口は一面巨大な鉄柵で出来ていて入ると両側に同じ2階建ての建物、奥にショップとキッチンが入る建物が有りウマく四方面を囲い中央にスペースが出来ている。
 中央のスペースは、広い筈が約150人規模の施設に対し倍以上の人が収容されている為、人が多く溢れていて酷い状況となっている。
 先程、伝えた様にショっプとキッチンが有り他にもコーヒー店や売店に賭場もある。
 ショップは、野菜や調味料と飲食料が多く寝具や生活用品など色々と売っている。
 肉や魚など、他に欲しい食材は言えば翌日に届く様になっていたりもする。

 キッチンは、食材を使い好きに調理が出来て包丁や火を使えるが、調理具や食器、ガスなど全て買い揃えてからとなる。
 コーヒー店は、個人で開いていてコーヒーマシーンを仕入れて1杯いくらかで売っており、他にドリンクも多数売っている。
 売店も、個人経営で24時間開いているからショップが17時に閉まる為、飲食類や日用品を仕入れて少し高値で売って商売している。
 賭場は、3、4ヶ所で開いておりバカラやポーカー、ブラックジャックがあり結構本格的でチップもしっかりした物を使っている。
 コーヒー店、売店、賭場は拘束されている人が開き稼いでいるのだ。
 他にも、ウーバー同様のアプリで食べ物を注文し看守に代金とチップを渡せば門の外へ受け取りに行ってくれたりもする。
 就寝時間も、決まりがなくシャワーは好きな時に何度でも入る事が出来て、金を持っていれば何でも出来看守に金を払えば携帯、酒や薬物まで手に入る所だ。

 唯一、無料で1日3食の食事が出るのだが朝はパンに砂糖が付いてくるが蟻だらけで食える訳がない。
 昼と夜は、米が挙一つ無い程の量がビニール袋に直で入ってくる物と、おかずは一口サイズの何鳥でどこの部位か分からない鳥が煮汁と一緒にビニール袋に直で入ってくる。
 鳥は、ほとんど骨で身の部分がほぼ無い。
 ようは、自分の金で買って食べる様にしてくれないと、看守もチップが入らず困るのだ。
 拘束時.私物を全て取られた為金も無く袋食を食べるしかなく、寝床や寝具も買えず階段やコンクリートの床で寝るしかなかった。

 面会日は、週2日で有り賑やかになる。
 面会室が、無い為面会に来た人達が収容所内にどんどん入ってくる形で、時間は朝~タまで出入自由となる。
 女性や子供も、多く家族とワイワイしても子供と遊び女と営みをしようが自由な時間だ。
 子供は、楽しそうに走り回って目の前を横切っていく「ここが、どんな所かまだ分かる訳ないよな」って思いながら私は眺めていた。

 1ヶ月が経つ頃、何の知らせも無く「明日裁判」と聞き、翌日に裁判所へ連行された。
 到着後、1時間しても車から降ろされずそのまま収容所に戻りだしたのだから、連行人に聞くと「裁判官が家族とお出掛けするから今日はなし」といい私がポカンとしていると「この国は、よくある事だよ」と言ってきた。
 その後、裁判は一度も無かったけど。

 3ヶ月程が経つ頃、日本人が強制送還されると話が出てきて数日後に送還が始まった。
 9人ずつ、4便いに別け週2便の2週間で返すらしく、未成年だった為すぐ帰国が出来ると少年扱いとなるからホっとしていた。
 しかし、1、2便に名前が呼ばれず「来週まで帰国は出末ないのか」と思い過ごした。

 2便目が帰り、2、3日後の収容所が騒がしく何かあるのか聞くと「国がロックダウンされるみたいで何かウイルスが流行したらしいぞ」と言われ、この日からコロナが始まった。
 笑ってしまう程、運が悪い。
 このタイミングで、強制送還が止まりコロナも落ち着く気配がなく、まだここに長居するだろうと覚悟するしかなかった。
 考えていた、最悪の状況通り1年半近く帰国が出来ず、しっかり成人を迎えてからの強制送還となるのだ。
 ロックダウンに、なってから面会が中止なだけで、中の様子に変化は特に無かった。

 そんな、ある日にボーッと煙草を吸っていたら大声が聞こえ、そっち方面を見ると3人が何かを引きずりながら近ずいてくる。
 目の前を、横切った時に何を引いているのか分かり巨体の人だった…死人に見える…。
 気になり、そのまま目で追っていると門に向って行き看守も当たり前の様に門を開けた。
 外に、繋がる門の外側の地面に巨体が転がされたと同時に、門が閉まり見えなくなった。

 巨体を、外いていた1人が戻ってきて話を聞くと「もう死んでる。敷地の外に出したのはこの中で死んでない事にして病院へ運ぶ途中に死んだと看守が報告書に着くためだよ」って言い笑顔でウインクをし戻って行った。
 ガキや、死体だったりとここは色んなのが目の前を横切る所だな。
 日本人の、一部の奴らが集まって詐欺の電話をかけるとウワサを聞いた。
 皆、それぞれで生活していた為周りの人が何をしてるのか、ほとんど知らなかったし気にも止めなかった。

 その後、一部の奴らは周りから反感を買ってたみたいで、詐欺の事を日本のメディアに流されて取り上げられていた。
 同時に、薬物まで持ってたみたいで使用中の所と詐欺の電話中の動画を、隠し撮りされメディアへ売られた様です。
 問題になっていたが、一番に外部へバレると困まるのが看守でクビになってしまうし、薬物を頼んでくれなくなると収入となるチップが消滅してしまうからだ。
 その為、報道に対し看守が出した報告書は「詐欺の電話は電波環境が悪い為不可能」とし、薬物もウマく理由を付けて報告をして何事も無かった事となり終了した。

 そろそろ、ページ数が無くなってきたけどまだまだ話したい事は多くある。
 脱走した外人も居たし、包丁持って人を追いかけ回してる奴とか暴動が起きて武装部隊が入ってきたり、他にもエピソードが絶えない程ある。
 そういえば、私が一時期使っていたベッドだが「漫画村/星野ロミ」って人が使っていたべっトだと聞いた。

 色々と、話をさせて頂いたが拘束された日から帰国日までの約2年近くで、かなり濃い日々を過ごし色々な体験をしたと思う。
 今回、お話が出来たのは数ある中の一部であり、かなり省略している為また機会があれば話をさせて頂きたいと思う。
 最後になりますが、帰国後やっと裁判も終了し、拘束から3年以上経ちこれから懲役生活が始まります。