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ここが変だよ『バチェラー5』①長谷川さんは結局のところ「ありがちな日本のオヤジ」というボロを出してしまった【中村淳彦の名前のないコラム】

いやー、終わりましたね、『バチェラー5』。今回も他人様の恋愛模様をサカナにあーだこーだウォッチャーたちが熱い議論を繰り広げたわけですが、ノンフィクションライター中村淳彦サンもそのひとり。さて、どんな感想を抱いたのか……3話一挙にお届けします。当然ネタバレありなので、まだ観ていない方は観てから、どうぞ。

 ノンフィクションライターの中村淳彦です。
『バチェラー5エピソード6』を見ました。知らない方に簡単に説明しておくと、『バチェラー』ってAmazonプライムでやっているめちゃ人気の恋愛リアリティショー。Amazonが選んだものすごくいい男を、女性たちで取り合うっていうそういう番組なのです。
 今回5人目のバチェラーに選ばれたのは、長谷川恵一さんって庶民的なバスケット選手の方、だけど、長谷川さんが選ばれた経緯は、スーパー上級国民の女性を男たちで取り合う『バチェロレッテ2』に、尾﨑美紀さんていうもう手の届かない女性が出てきて、それを取り合った中の男性のひとりだった。
 長谷川さんは最後の最後まで残ったけど、2人に1人の決勝で負けた方で、その負けてしまったバスケ選手の長谷川さんが5人目のバチェラーに選ばれた。人選がリサイクルだって批判もあるけど、今度は長谷川さんを巡って女性たちが取り合いましょうっていう番組になった。
 結論からいうと、メキシコで恋愛が大盛りあがりして、日本に帰国してから違和感が出てきた。長谷川さんが女性たちの家族に会いにいったのだけど、ちょっと首かしげるような展開だったと、僕は思いました。それはどうしてか、話していこうと思います。

 今回の『バチェラー5』は、出ている女性がすごくレベルが高い。みんな美人で、育ちがいい。しかも芸能界とか、港区系にも絡んでいるような、女性も一般社会だったら手が届きそうにない人が集まっていた。最初女性は16人いたのが、メキシコで6回やって、最終的に3人に絞られた。
 長谷川さんは、メキシコ最終回の残り5人のときには、もう全員と全員、恋愛している状態で、誰が選ばれても不思議じゃないっていう、かなりハイレベルな戦いとなった。
 残った3人の竹下理恵さんは、34歳のメイク講師の方で、すごくちゃんとした方。それで難病を抱えているけど、本当に素晴らしい大人の方でした。
 2人目の西山真央さんは26歳のスーパー美人。レベル高い16人の中でも一番美人の女性です。
 最後の大内悠里さんは、元キャバ嬢と言っているけど、今は飲食店を多店舗経営していて、ベンツも乗っていたし、28歳にしてはとんでもなく稼いでそうな経営者の方でした。

 長谷川さんは37歳、普通に結婚するんだったら、難病なことを抜かせば、竹下さんが無難。結婚だったら、竹下さんとそのまま結婚して家庭を築いていくのが想像できる雰囲気だった。やっぱり落ち着いているし、年齢相応だし、結婚は等価交換なので、長谷川さんのスペックと竹下さんのスペックが一番ちょうどいい。結婚だったら竹下さんでしょうと、みんなが思っているはず。
 なにが等価交換か言うと、一番は年齢。37歳と34歳で、あと竹下さんが圧倒的に社会人として落ち着いていたり、竹下さんだけがちゃんと長谷川さんと結婚して、生涯ともに生きていきたいみたいな意思があった。だけど、竹下さんは今回で落ちてしまうんですね。えー、ここで落とすんだっていうのが、まず、大きな違和感だったですね。
 なんでこうなるのかと言うと、竹下さんが西山さんと大内さんに劣ってるのは、年齢。ここで長谷川さんは、日本人のオヤジのありがちなことを持ちだしてしまったわけです。長谷川さんはバチェラーをかなり頑張って、ハイレベルの男を演じてきたけれども、ちょっとボロが出てきたかなと思いましたね。
 落とす理由を考えると、難病がある。番組でみんなに見られているから「難病があるから結婚したくありません」みたいなことは言えないし、そういうことを隠す。言ったら炎上するから言えないんだけど、落とすならば、本心を言わないとやっぱり違和感がある。

あんなスーパー美人が高卒で工員になるしかないなんて…

 美人の西山さんは大分県出身、長谷川さんが親に会いに行った。映像では別府だったけれども、別府中心地なのか、別府近辺の田舎なのか、ちょっと分からなかった。その辺を隠すのもどうかなと思いましたね。西山さんはとんでもない美人だけど、話を聞いていたらすごかった。高校時代は水球をやっていてスポーツ刈りで、スポーツ刈りにしているから全くモテなかったらしい。それで高校卒業して、海沿いにある巨大な工場に、高校の先生が言うままに就職したらしいのです。
 その海沿いの巨大工場で、工員として5年間働いて、辞めて、『バチェラー5』に出たっていう流れ。僕の祖父母が大分県出身なので、何度も何度も行ったことがあるので分かるのですが、やっぱり、ちょっとおかしな土地。西山さんレベルのスーパー美人をスポーツ刈りにさせて、部活を頑張らせて、卒業したら高校が湾岸沿いの工場に入れるなんて、ちょっと狂ってる世界だなと思いましたね。
 西山さんはいままで大分県の工場で埋もれていたけど、今回『バチェラー5』に出たことで社会に出てきてしまった。おそらくいろんなタレント事務所が声かけて、これから成功の道を歩まれると思う。なので、この西山さん、長谷川さんと結婚している場合じゃない。しかも長谷川さん11とか12も上のオヤジだし。
 結婚している場合ではないって、西山さんも理解していると思う。たぶん長谷川さんと結婚する気はないだろうし、今回は、3人の中で西山さんが落ちるのが一番丸く収まったと思う。落ちて、一応悲しいフリをして、東京に出てきて20代後半の輝かしい人生を送るのが、西山さんの一番いいパターンでしょう。田舎に生まれたことで、あんなスーパー美人が強引に工員にさせられるって、もう衝撃でしたね。田舎、やばいですね。

 元キャバ嬢の大内さんは、なかなか可愛い。性格も裏表がない人で、僕すごく好きですね。大内さんは三重県生まれで、三重県もなかなか田舎で、シングルマザー育ちで、お母さんが地元でスナックやっている。お母さんがやっているスナックに長谷川さんと行ったのだけど、お母さん、たぶん僕と同年代でしょう。
 僕はエロ本とかアダルトビデオとか底辺とかの取材をしてるライターなので、なかなか分かるのですが、女性のスナック経営は、なんていうか、ガチの底辺の仕事なのです。ガチの底辺というのは、若いうちから、水商売とか風俗系とかを一周、二周して、なかなかそこから抜けられなかった。女性が最後の最後にやるのが田舎のスナックなのです。たぶん、どこの地域行ってもそういう一面あると思う。
 お母さんが底辺な人生を送られているのは、もちろん差別するわけじゃなく、頑張って生きているってことで、それは素晴らしい。今回大内さんで気になったのは、非常にお母さんのことが好きなことなんですよ。誇りに思っている発言があまりにも多すぎて、ここはちょっと気になりましたね。
 大内さんは底辺の育ちで、それを誇りにして今は成功している。家族が仲良くてお母さん好きなのはいいんだけれど、そこまで自分たちがこんなに素晴らしいんだみたいなことを言うのかな、って違和感があった。たとえば、僕なんかもなかなか底辺だけど、普通、底辺の人は底辺っていうことを自覚してるから、底辺を抜けられるような、一般の階層とか上級の階層の人と結婚とか、そういう機会があった時には、自分が底辺だってことを自覚して、その一般社会と知り合うようなきっかけがあったことをチャンスと捉えて、お母さんはお母さんで、今までのことは尊重するけれども、ちょっと私はいろんなチャンスがあるので、抜け出して、中流とか上流とか一般社会に行きます、みたいな姿勢が普通だと思う。
 だけど、大内さんは底辺に誇りを持ちすぎて、上流とか中流の方々を自分が誇りを持っている底辺に引きずり込もうみたいな意識を感じた。メキシコではね、もうめちゃめちゃ盛り上がって本当に、大内さん名シーンを出したすごい人なんだけど、日本に帰ってきてからね、いきなり違和感が出てきた。大内さんが長谷川さんを底辺に引きずり込むとか、底辺って自覚なしに親子関係が素晴らしいことを主張することに首かしげたんですね。

底辺に誇りを持つという感覚はズレている?

 差別しているわけじゃない。また具体例でアダルトビデオを出しますが、アダルトビデオの世界っていうのはガチの底辺。で、アダルトビデオの世界でよく言われてるのが、当事者の勘違いしている人たちは、アダルトビデオとかエロの世界も、すごく素晴らしい仕事。だから、映画とかテレビの、映像クリエイターと自分たちは、なにも変わらない、みたいなことを言い出す人が昔はたくさんいた。
 一般の映像クリエイターとアダルトビデオの監督が、対等な訳がないじゃないですか。そんなアダルトビデオに誇りを持って、自分がそんな才能があるクリエイターだったら、女の裸を利用しないで作品作ってくださいってことなんですね。底辺な人だから、女性の裸がないと物作れない、そういう身分は底辺なんですよ。
 だから大内さんみたいに、アダルトビデオの監督だけど本当に素晴らしい仕事で、一般の映像クリエイターと我々はなんにも変わりません、みたいな、それよりもっと我々のほうが上です、みたいな主張はズレているわけです。ズレてる人がいるのは多様性の社会なのでいいけれども、結婚となったら、そういう特別な関係を結ぶとなったら、そういうズレている人は難しい。

 西山さんは田舎に生まれたことで、能力をまったく生かしきれていないことが判明して、大内さんは底辺の人ということで、底辺なことはなにも悪くないけど、底辺に誇りをもって、引き摺り込まれるような姿勢が見えてしまった。だから、この2人は選ばないほうがいいんですよね。
 西山さんは早く落として、もう華やかな20代後半を送るべきだし、大内さんはちょっとズレがある。結婚となると、ちょっと難しい感じがしました。
 そういう背景がありながら、なかなか完璧だった竹下さんを落として、西山さんと大内さんを選んだことは、長谷川さんはなにが目的かというと、日本のオヤジにありがちな、若い子がいいわけです。全てのことを取っ払っても、自分の欲望の、若い子と結ばれたいことが出てきてしまった。もう、これは難しいんじゃないですかね。
 メキシコで大内さんが最後、告白された時、すごい盛りあがりになって引き込まれたけど、日本に帰国して、僕も現実に引き戻されてしまった。結婚はやっぱり収まるところに収まらないと、収まらない。やっぱりどこかで破綻すると思うので、人は変わっていくから分からないけど、僕の予想としては、長谷川さんは、誰かと結婚するってことまで行かないと思いますね。
 エピソード6の段階では、そう感じました。

<著者プロフィール>
中村淳彦(なかむら・あつひこ)
ノンフィクションライター。無名AV女優インタビュー『名前のない女たち』シリーズ、『東京貧困女子。: 彼女たちはなぜ躓いたのか』、『悪魔の傾聴』などヒット作多数。花房観音との共著『ルポ池袋 アンダーワールド』(大洋図書)が絶賛発売中。Voicy「名前のない女たちの話」日々更新中!https://voicy.jp/channel/2962