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酒井透

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(さかい・とおる) 東京都生まれ。写真家・近未来探険家。 小学校高学年の頃より趣味として始めた鉄道写真をきっかけとして、カメラと写真の世界にのめり込む。大学卒業後は、ザイールやパ…
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#奇祭

【写真家・近未来探険家 酒井透のニッポン秘境探訪】長野県松本市の男根を担いで回る奇祭『道祖神まつり』

乗れば子宝に恵まれる  長野県松本市の美ヶ原温泉郷で行われている「道祖神まつり」は、人々にハピネスを分け与えてくれる祭りだ。  ご神体となっているのは、長さ4メートルあまりの『男根』。ハッピを着た10人ほどの男性陣がご神体を担いで20軒ほどの宿泊施設を回る。  クライマックスは、黒光りしたご神体に女性を乗せて、ユッサユッサと揺さぶるシーン。最初は、躊躇していた女性も、『エイッサ、ホイッサ。エイッサ、ホイッサ~』というかけ声に乗って揺られているうちに、笑みがこぼれるように

【写真家・近未来探険家 酒井透のニッポン秘境探訪】長崎県雲仙市の『鳥刺し踊り』

 真っ赤な九尺褌(きゅうしゃくふんどし)を身にまとい、竹竿を持った中年の男衆がステージに上がると、会場から笑い声と拍手が巻き起こった。  この男衆が登場するまでここで行われていたのは、神聖な会合だ。それが終わって今、金屏風の前に立っているのは、半裸状態の男たち…。良く見れば、ほっかぶりをしている。司会者が彼らの正体を明かすと、おもむろに踊りが始まった。 〝うらの竹藪押し分けへし分いたて見れば、クワッチョ1羽鳩1羽、毛くいじりの真最中~〟  男衆は、ヒョコヒョコと歩きなが

【写真家・近未来探険家 酒井透のニッポン秘境探訪】古河市高野の「ろうそく地蔵尊」

300年続く奇祭  茨城県古河市に『奇祭中の奇祭』と呼ばれている祭りがある。8月23~24日にかけて古河市高野の高野八幡宮で行われている「ろうそく地蔵尊」がそれだ。  この祭りがピークを迎えるのは、初日の午後8時頃。硬い石で作られた地蔵は、紅蓮の炎に包まれ、その周りは、ろうそくの炎が発する熱の影響で灼熱地獄になる。ろうそくに火をつけている世話役の人たちの額からは、幾状ものの汗が滴り落ちている。でも、この地蔵は、何を語ろうともしない。ひたすた”耐えて”、”耐えて”いる。世話

【写真家・近未来探険家 酒井透のニッポン秘境探訪】鹿児島県悪石島の〝ボゼ〟

奇声をあげ棒をふりまわす異形の神  鹿児島県の鹿児島本港から「フェリーとしま」(※)に乗って南下すること約11時間。トカラ列島の悪石島に伝わる『ボゼ祭り』は、悪石島で暮らしている子どもたちにとって、最も恐ろしい祭事となっている。  ヤシ科の植物である「ビロウ」の葉を身に纏い、巨大な面を着けた仮面神のボゼは、聖地を後にすると、赤土が塗られた棒を振り回しながら人の輪の中に突っ込んで行く。そして、ターゲットにした人の前に立ちはだかると、身体をこすりつけながら「ブルッ、ブル。ブル