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鈴木ユーリ

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(すずき・ゆーり) ライター。『実話ナックルズ』にて連載『ゲトーの国からこんにちは』など X@yuri_suzuKii
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#二丁目

【インタビュー】フッドリッチトーキョーRAKO「安藤組“餓狼の血”を継ぐ男」の半生(前編)

祖父は「安藤昇の言うことを聞かなかった唯一の男」  まだ残暑がただよう秋の日のことだった。 「来たか」  渋谷の鰻屋の門をくぐると、その人はすでに待っていた。伝説の元ヤクザであり、異色の映画スター。歳は召していたが、目をまともに見れないほどのオーラがあった。 「楽にしていいぞ。で、今は何をやってるんだ」 「パクられて出てきて、今は抗争を繰り返しています。××組と揉めてます。○○組とはもっと揉めてます。自分は、今流行ってる振り込め詐欺とか許せなくて、薬をイジってる不良も

鈴木ユーリ「ニュートーキョー百景」#3 新宿二丁目「LGBTタウン」って呼び方、しゃらくせえな(後編)

 歌がきこえてくる。  雑居ビルの2階からもれるカラオケは、微妙にふるい歌謡曲ばかり。令和も5年目だっていうのに、聖子・明菜の二大巨頭はむろんのこと、中島みゆきもまだまだ現役で、安室奈美恵ナイトも毎年のように開催されてる。倖田來未バージョンの『キュティーハニー』もいまだに定番のアンセム。「沢尻エリカ様がお忍びで襲来!」という逮捕前のフライデーの切り抜きを後生大事に貼ってあるバーもある。  前時代的なのはミューズだけじゃない。毎週末激混みしている『DRAGON MEN』など

鈴木ユーリ「ニュートーキョー百景」#2 新宿二丁目「LGBTタウン」って呼び方、しゃらくせえな(前編)

 甲州街道を歩いてると、太宗寺で盆おどりをやっていた。  夏のはじめ、陽が落ちても空はまだ青く、浴衣すがたの踊り手もまばら。宵がふかまると、近所の住人や子どもだけでなく、祭り囃子につられてカップルや外国人観光客も境内につどってくる。高まる太鼓のひびきに、やぐらをかこむ人の輪が二重、三重にふくれていく。  ラスト二曲は『マツケンサンバ』と、氷川きよしの『チャンチキおけさ』だった。  セレクターの趣味なのか、ほかに理由があるのか。おかまいなしに手をひるがえし、行燈の下でみん