小説

 本物の反出生主義者が人類を不妊にするために核の雨を降らせてから20年の月日が経ったが、しかしその災禍がもたらしたものは人類史の終焉ではなく超能力者の出現であった。人類の大半は高濃度の放射線により体細胞が崩壊し、そのまま死へと至ったのであるが、一部の個体は放射能汚染された環境に適応し、生存し、そしてその環境下によって変容した遺伝子を後世へと繋げていった。それにより生まれたのが超能力者である。彼ら災禍後の新世代は従来人類のおよそ10倍の筋力量、3倍の脳重量、そして個体ごとに固有の超能力を有している。触れた物体を離れた位置にある任意の物体と瞬時に入れ替える能力、視界の任意の位置に発火現象を起こす能力などが例として挙げられる。


 そして今、旧世代人類と新世代人類は互いの存亡をかけた死闘を繰り広げている。対立の理由は明白で、サピエンスは2種類も必要がないからだ。そして旧世代人類である俺は今、新世代人類である超能力者を目前にしている。

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 そいつが喚き声を上げながら此方へと動き出すのと同時に、俺は腰のホルスターから44口径リボルバー式拳銃を取り出しそいつの股間をマグナム弾で撃ち抜く。

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 超能力者は股間から緑色の粘液を撒き散らし、その場でうずくまる。そして今度は拳銃の狙いを敵の脳天に定める。

「今度こそ、俺の夢を叶えさせてもらうぜ」

 股間を撃ち抜いたのは敵を不能にするため。不能にしたのは反出生主義の夢を実現するため。一度は失敗した。それは効率を優先し細部を蔑ろにしたからだ。次は絶対に間違えない。反出生主義のため、俺は全人類の股間を撃ち抜くーー

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