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仏のいえ (2023年6月)

COVID‑19感染症発症以来、入国条件に「新型コロナワクチン接種証明書」を必要としていたため、海外旅行は二度とできないのではないかと思っていました。しかし、G7サミットが日本で行われる数日前に条件が変わりました。それは、三心寺20周年に行くチケットを取るためには十分なタイミングでした。

お世話になっている寺を留守にすることには躊躇いがありながら、奥村正博老師の退董式を含んでいる20周年行事は先にも後にもない貴重な機会です。7年前にはカーネギス法光さんが副住職になり、徐々に準備が行われて機が熟した、そんな日でした。奥村老師の弟子たちが、一度に三心寺に集まることも、もしかしたら今回が最後になるのかもしれません。

6月23日の夕方は、レセプションパーティーと奥村老師の在家得度を受けていられるヤエル・ワイズさんのピアノコンサート。24日は2つのディスカッションと奥村老師の退董式。25日は三心寺のお袈裟指導を続けてきた奥村優子氏によるお袈裟の話と法光師の入寺式が行われました。

三心禅コミュニティ20周年記念行事(日本語のサイト)
https://www.sanshinji.org/platinumcelebrationinjapanese.html

アメリカ各州からはもちろん、コロンビア、イタリア、フランス、ドイツ、オーストリア、そして日本から70人近くの方が集まりました。80歳になられる秋葉総監老師は30年ほど前からアメリカに渡り、主にサンフランシスコでお勤めをしながら毎年のように三心寺へ来てくださっていました。祝辞では様々な思い出が浮かんできたようで言葉を失いつつも、「瑩山禅師は多くのお弟子さんを育て、道元禅師の教えを日本各地に広め日本で一番大きな宗教にしました。世界中からのお弟子さんを育て、世界中にその教えを伝えている奥村老師のお姿は、現在の瑩山禅師だと思います」という内容の最高の言葉を仰って、またその教えを次に伝えていくのは弟子たちの力量だという厳しい戒めも伝えてくださいました。しかし、今回は奥村老師の孫弟子たちの姿もあり、法は伝え続けられていることを確認しました。私はそのような法系の中でどのように行じていくことができるか、私の誓願とは何か、これから問い続けなければなりません。

「私にできるのは、坐禅と翻訳と提唱だけ」と仰る奥村老師のその「だけ」を続けることの大変さを、私は僧侶の身になりながら日々感じ続けています。その環境は奥村老師の動じない芯の上に、様々なサポートがありながら、また求める人の姿がありながらコミュニティが維持されてきたことの歴史を感じました。

2012年に三心寺と出会い、2017年に得度をさせていただいたものの、その後師匠や兄弟弟子とも離れ、日々の忙しさや疲労に愚痴が先行してしまう中、すっかり発心の気持ちを忘れていました。しかし、この三日間であっという間に蘇ったのでした。帰国当日の朝、四年ぶりに三心寺の禅堂で坐り、久しぶりに集団で坐れることの有り難さを感じました。

時節因縁の仏性、刹那前後に円成す。
仏性とは時節因縁であり、その時その時に残すところなく現れ、前にも後ろにも余すところなくまどかに成就している(道元禅師・永平広録第七)

修行そのものが悟りであるという道元禅師の思想は、「日々の生活そのものが仏祖の在り方の表現」であり、「完成された自己の表現」である。疲れたり気を抜くと怠けてしまうことは日常のこと。そのことを省みながら、他者に支えられながら生きている自分を認識し、感謝の気持ちを持って仏道を歩むことの大切さを改めて感じています。

いつも心温まるお気持ちをありがとうございます。 頂戴しましたサポートは真実に仏法のために使わせていただきます。引き続きご支援のほど宜しくお願い致します。