遭難した人から話を聞いた話。~生還する秘訣~
今朝の弥彦山の展望台で一緒になった方と世間話をしていたら、そのご婦人が笑いながら「この前、ヘマしちゃったのよ。◯◯山に行った時にね」と言うので、「あー、そこ遭難事故のあった所ですよ。気を付けて下さいね〜」なんて相槌ちを打ったら「それ、私なの」と言われ、腰を抜かしました。
その遭難事故は行方不明になって捜索するも見つからず、翌日に発見されヘリでの救出劇で新聞にも載った山岳事故。私でも知っているくらいの遭難事故です。
話を聞けば、山友達から◯◯山に一緒に行こうと急に言われ、時間がなかったので、あまり調べずに入山したら下山中に道に迷ったと言います。
人のあまり入らない低山、藪山での遭難事故でした。
私も行ったことのある山ですが、残雪期で確かにルートが分かり難かったので引き返した覚えがあります。
その方は登りの藪で厄介だなと思いつつ、下山時に登山道を見失い、うっかり5〜6m下の沢に滑落。大きな岩の間に挟まり滑落停止したので、大事には至らず大きな怪我がなかったのが幸いでした。
そこで進退極まったのですが、沢登りの経験もあったので、水を全身に被りながらも登り返して、藪を彷徨った際に見つけていた洞穴でビバーク。
翌週の燕岳に備えフル装備だったことも幸運だったようです。
家族には「ここでビバークするから大丈夫」と連絡を入れたのですが、悔やまれるのは一緒に行った山友達の電話番号を知らなかったこと。連絡さえ取れればすぐに助けに来てもらえたかもしれません。
一晩夜を明かし、翌朝には自ら110番通報をしてヘリで救出されたそうです。
ヘリが来てくれたのは良いのですが、中々見つけてもらえなくて大変だったと言っていました。
たまたまザックが新調したばかりの赤色だったので、ザックを両手で持ち上げてようやく見つけてもらったそうですが、樹林帯での捜索だとこういう困難もあるようです。
話を聞けばその方は登山経験50年の大ベテラン。
国内はもちろんのこと、スイス、ニュージーランド、ドイツなど海外登山の経験もあるといいます。
「ビバークにすることになったけど全然怖くなかった」という言葉が強く印象に残ったのですが、これは50年の登山経験の為せる技なのでしょう。普通は冷静にビバークするなんて家族に電話できるものではありません。
恐らく助かった大きな要因はこのように、パニックに陥らず冷静に判断して体力を温存できたことにあると思います。
落ちた沢を5〜6m登り返えせると判断した技量もすごい。
でもそこにいたら腰まで水に浸かったままだったと言いますから、低体温症で絶命を迎えるよりは賢明な判断です。
遭難からの生還は体力より精神力がモノを言いいます。
それと悲観的なのはダメ。
そのご婦人、遭難後は流石に自粛をしたそうですが、2週間と我慢できずに登りに行ったという話を笑って話してくれました。
その行為には賛否あると思いますが、個人的にはそうこなくっちゃと思います(笑)
家族、親戚皆に反対されたのですが、旦那さんだけが「お前から山を取ったら何も残らないから好きにしろ」と送り出してくれたそうです。
山登りばかりするババアだから、旦那さんからはヤマンバと呼ばれているそうです。だから、山を取ったら単なるババアになっちゃうからつまんないと旦那さん。
遭難騒ぎを起こした事件については、姥捨失敗と笑ってくれたそうです。
最悪の事態でも笑い飛ばせるメンタリティが逞しく生き抜く秘訣なのだと思いました。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?