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無人島生活(1泊だけ)

人間がいかに自然の中で無力か。


漫画ONE PIECEを読んで
冒険への勇気を振り絞り、

ディスカバリーチャンネルの
元軍人が60日間無人島で暮らす

やつを見て予習とした。


しかしそこではなにもできなかった。


あなたはアドレナリンを肌で感じたことはありますか?


無人島入島の30分前、
自分の持つ全てのアドレナリンが
身体中に走り回っていることを感じた。



恐ろしいくらいの好奇心とワクワクが。

対して、
恐ろしいくらいの恐怖と不安が。



今回の無人島は簡単に言えば
「自分探し」をしたくて企画したものだった。


圧倒的に生きることに向き合い、
圧倒的な何かを感じたかった。



しかし生きることに向き合うことも少なく
あまり何も感じられなかった。


圧倒的な敗北感だけを手元に、
予定の2泊を残して2日目の夕方、島を出た。



1日目

今回の装備は、海パンとサンダル。
そして、ナイフとライターとゴーグル。

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最後に緊急用のスマホ(40%の状態で)


この装備で雨の中1人で無人島に乗り込むので、
軽く自殺を疑われた。


向かうは家島諸島加島の、北東部分


天候は雨。
雨は危ないと思われるかもしれない。
しかし、夜に雲がかるために気温は下がらず、
飲用水もある程度確保できる。


とりあえず落ちている空の容器を、海水で洗っては
雨水を溜めるために設置していった。

そうしながら周囲15キロほどある島を
西側に岩場を歩いていく。



寝床にできる崖の岩の小さな窪みを見つけた。
流石に5月中旬の夜は寒いので、
ポイ捨てされていた、汚ったないブルーシートを
海水で丁寧に洗い、寝袋とした。

意外に暖かく、雨も当たらないために快適ではある。


※酷すぎるポイ捨てについては後で話そう。



その後、西側の海岸の水際から1mぐらいのところに
ウニを見つけた。


死ぬほど嬉しかった。


今後の食料の心配を取り、ウニは明日に回して、
その辺の葉っぱを1枚食べてみた。

子供の頃を思い出す、ただの葉っぱの味。



予習に用いたディスカバリーチャンネルで
探検家の人が

「小さな成功体験を積んでいかないと気が滅入る」

と言っていたのを思い出した。
自分にとってはこれほどにない成功体験だった。



そうこうしているうちに陽が暮れた。
雨のため火は使えないが、
基本的な暖は取れているためにあったかい。


文句をつけるのなら、崖の小さなスペースの砂利に
ブルーシート1枚では身体が痛すぎる。



しかしそこからが今回の1番の敵が現れた。


蚊である。


皆さんがどんな蚊と共存してきたかわからないが、
田舎の蚊はとにかくデカく、ダメージも半端ない。


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完全に暗くなったのがたぶん20:30ぐらいだと思う。

寝床の岩場に落ち着いたのもそのぐらいの時間だ。
岩場の窪み以外に雨を防げる場所はなかった。


そこで主人公の蚊がやってきた。

完全にノーマークだった。
ディスカバリーチャンネルにも
蚊と闘うシーンはなかった。


無人島に久しぶりに来た人間であり、
唯一の雨を防げるスポットを敵は見逃さなかった。


最初3匹ぐらいだったものが数を増やしていく。

あいにく、心配もあって寝溜めてきた自分は
全く眠くならない。


また岩場を歩いて脱出することも
真っ暗で雨の中では流石に気が引ける。


テントなどの装備もなかった自分は
とりあえず迫る敵を潰していくしかない。

潰した敵の表情は暗くて見えないために
優しく葬り去ることもできずに捨てていく。


まだ眠くない。


蚊取り線香を思い出し、
濡れていない草木にライターで火をつけるが、
湿気ていて、つかずになくなった。


それにしても夜が長い。
Youtubeや電話などでは一瞬ですぎる夜の時間が、

蚊と闘った時には異様に長く感じられた。

そもそもスマホは北東に上陸地点に置いてきたため、
今が一体何時かもわからない。


まだ眠くない。


最初に3匹ぐらいだった敵たちは数を増し、
上下に両手を振れば、3回に1回はヒットするほどになる。

暗闇で見えない敵と闘ってもキリがない。


よしシールド(ブルーシート)を張ろうと思った。

チャックはないが、自分の手でなんとか締め切ってやった。


そこでだ、
皆さんは服越しに敵に刺された経験があるだろうか。

奴らはなんとシールド越しに攻撃をしてきた。
しかも巧妙にもシールドを突破する奴も現れた。


シールドの外からは両側の耳でブーンという音で、
精神にダメージを与えてくる。


まだまだ眠くない。


そしていくら時が経ったかもわからない。
明るくなる4:30までの8時間、
この勝負に耐えたらおれの勝ちだ。


自分とキャンプなどをした人はよくわかるだろうが、
どこででもすぐに寝れる。
そして起こされても起きない。

その件で精神科医で睡眠脳波をとったこともある。
ひどい時には浴槽で7時間睡眠を週6でしていた。


そんな自分が眠れない。
それこそ精神科医にかかりたいほど
精神を皮膚もろとも削られていく。

戦争ものの映画でありそうなぐらいの拷問だ。


さて何時なんだろう。

たまに外を見ても変わるのは雨足ぐらいだ。


向かいの島の電気が若干減ったのを見て、
22時ぐらいになったかなと成功体験を積んだ。

しかしあと6時間という残酷さを含んだ成功だった。


まだまだまだ眠くない。


もう一晩この拷問に耐える勇気はない。
ここで明日の夕方に無人島を出ることを決めた。


ここからは幾数時間のお話は長くなる。
割愛しよう。



少し明るくなった。
勝機が見えた。


明るくなるのも残酷なことで、敵が見えてしまう。

1本の腕に敵が3体ほどいたりする。


漫画はだしのゲンでの、
原爆死体にハエがたかっている描写とあまり変わらない。



2日目

まあ、とにかく勝ったとみた。
雨もほとんど降らなくなったので、
戦場から脱出して、島の東に足を進めた。


地獄から脱出したが、眠さと全身の戦いの傷とで、
足取りが非常に重い。
腹も減った。

東側を絶壁で進めなくなったところで折り返し、
北東の上陸地点に戻ってきた。
太陽の感じを見たところ、8:30頃だろう。


昨日の決意のもと、
手配していた海上タクシーに連絡を入れるべくスマホを解禁した。

6:54だった。地獄。

とりあえず本日の最終で帰りたい旨を伝えて、
17:30に迎えにきてもらう手配をとった。


眠くなり寝た。

たぶん2時間後ぐらいだろうか、
日差しが暑すぎて起きた。


そうだご褒美があった。

昨日見つけたウニを探しにいった。


そこにはいなかった。


だがウニをとった残骸があったために
海に入るとウニがいることは確信できた。

トゲがあるので、ポイ捨てされているゴム手袋を洗い
ゴーグルと共に装着した。


漁をするのは初めてだ。
5月中旬の冷たすぎる海に挑み
5メートルほど進んだところでウニを見つけた。

しかも大量に。


身長ぐらいの水深という、超楽勝な人生初の漁。

しかし、トゲがついている上に
思ったよりも岩に張り付いている。

8回ほど潜ってようやく捕れた。


誰かと、この感情を分かち合いたくて咄嗟に振り返ったが、
相変わらず、ポイ捨てのゴミしか手を振ってくれない。

1人で吠えた。

タクシー業者から折り返しがあるために
特別に持ってきていたスマホの電源をつけて、
思わずInstagramのストーリーを撮った。


最高に嬉しかった。


とりあえず切っても良さそうなところから
ナイフを入れてウニを開いた。

内臓を除去し、木の枝を箸代わりにして食べた。


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ウニの味はするが
それ以上の説明をできるほど味はわからない。

だが最高においしかった。

今後これを超えるウニに出会うことはないだろう。



そこで想定外の問題が起きた。

2個目のウニを求める自分がいなくなっている。


理由はたぶん夕方に来る海上タクシーによって、
生きることに緊張感を感じなくなったからだ。


無人島で生きようとしないことほど恐ろしいことはない。

大量の時間だけが残った。


昼寝をした。

暑くて起きた。


火でも起こそうかと薪を集めた。
めんどくさくなって集め終わった瞬間に全て捨てた。

ナイフがあったのでムダ毛の処理を始めた。
めんどくさくなってやめた。

ポイ捨ての軟球で壁当てでもしようと投げてみた。
思った通りに跳ね返らずに苛立ってやめた。


かなり腹が減ってきた。
なんせ島では、1枚の葉っぱと
1個のウニしか食べてない。
なのに敵と闘うために昨日は徹夜だった。


しかし死なないことは分かっている。
なんせあと6時間ぐらい耐えれば迎えが来る。
緊張感などなくなっていた。


腹が減った。
姫路に着いたら何を食べようか考えた。
そういえば家に残り物のカレーがあった。
その前にファミチキぐらいでいいか。


午前中に偏った日焼けをしてしまったので、
海パンを膝から足首の部分へとずらし、
大きめの葉っぱで顔を覆い、
日サロ的なこともした。

海岸のポイ捨てにたかるハエがこっちへきたが、
昨日の敵と違い攻撃はしてこないために、
ブンブン飛んでいても寝れた。


時間が経たない。
暇すぎてスマホを開けて、
「無人島に来ました」感のある写真で撮った。

飽きた。


とにかく時間が経たない。

予習のディスカバリーチャンネルでは、
無人島を生きるために必死だったが、
なんせ自分は生きられる。

格段に違う安心感のため、行動が一変するのだ。
何かの目的がなければ人は頑張らない。


ヘソに砂利を詰めたりした。

10秒で飽きた。


とにかく腹が減った。
しかし、命は保証されているために
何かを得ようとする向上心は一切芽生えない。



そんなことを永遠にしているうちに、
たまに確認していたスマホが17時を示した。

1泊の食事が葉っぱ1枚とウニ1個だけのため
お腹が空いて力が出なかった。


しかし助けが来る。
島の南端の迎えが来る地点に移動しよう。


南端についてスマホを確認したところ、
20分前に着信があったので折り返すと
初手で

「すみません予定があって18:30になってしまいます。」

あまりにも苦しかった。

その1時間後になるという通達と
かなりの空腹のせいで言葉が出なかった。


目の前にあった食料が1時間延ばされるダメージは
計り知れなかった。

思わず当たりを見渡して食料が落ちていないか探した。


その島はポイ捨てだらけで、
未開封の食料や飲料はないものの、
ペットボトルなどは1000を超えるだろうし、
鍋やライターなどはもちろんのこと、TENGAまであった。


その中で一際光るものを目にしてしまった。

未開封の木綿豆腐だ。


ネタではない。
本当に光って見えた。


しかも手に取ると、消費期限は2021年の3月。
消費期限が2021年というだけで大優勝だった。

多少の海水感はあったものの、
これを超える木綿豆腐に出会うことはないだろう。


他に食料を探して余力を振り絞りあたりを歩くと、
明らかに人間のものらしい背骨を見つけた。

一瞬息を呑んだがあまり深くは考えなかった。
海風が強く、上空には大量の鷹が飛んでいたので、
納得して目を背けた。
写真は撮ったが貼らないでおく。


とにかくポイ捨てがひどい島だった。
奴らは好き放題して帰っていく。

全部集めるためには1ヶ月はかかるので
ゴミ拾いはできなかった。

しかし偽善かもしれないが、
自分の使った雨を溜めたバケツとブルーシート、
そして軟球と木綿豆腐の容器は持って帰った。


18:30に船が来たので、元気なふりをしながら、
おっちゃんと島に戻った。
いや確かに元気になった。
人の暖かみだろうか。

人と喋るだけで気持ちの持ちようが全く違う。

2人で気まずくなるのが怖いのではなく、
とにかく人と話がしたくておっちゃんを質問攻めした。



そこから姫路港に出て家に帰った。
疲れからか、しんどかった。


親に敵と闘ったことについて話すと、

「新しいところの蚊に刺されまくったら死ぬで」

と言われた。


熱を測ったら37.9度あった。


怖くなって調べると、
人を1番殺している生物は蚊だという。

2位の人による殺人を差し置いて、
蚊が年間に72万人殺しているそうだ。


だから若干、死の恐怖に立っている。

サイトを見終わって測り直したら38.4度あった。


しんどいがnoteを遺書代わりに書いている。



遺言は2つ。


1つ目
蚊には気をつけろ。



2つ目
何か目的を持つこと。


2日目に目的を持たなくなった自分は
圧倒的に暇つぶしに走った。

無人島では時が経つのは遅いが、
スマホがあればもっとすぐに暇を潰せる。


この世界は気持ちよく暇を潰すために
文明を創り上げた。


極端にいえば、今スマホを触っている時間は、
ヘソに砂利を詰めているぐらいの価値しかない。


ディスカバリーチャンネルの人はかっこ良かったが、
ヘソに砂利を詰めている自分はあまりにも情けない。


同じ無人島というところで、
目的があるかないかなだけであるのに
この代わりようである。


目的を持って生きること。

蚊に気をつけながらこれはひとつ覚えてほしい。



蚊なんかに殺されたらたまらないので、
頑張ってあしたも目覚めようと思う。


熱も37度台にまで落ち着いてきた。

敵がおらずに快適な夜だ。
あしたは今日よりも強く生きてやろう。

おやすみなさい。

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