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和歌心日記

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百人一首から想像したストーリーを書き集めました。
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#恋愛小説が好き

和歌心日記 14 西行法師③

嘆けとて 月やは物を 思はする ***  キリエと一日児童館で過ごした藤原晴家は、母と車で…

函館次郎
4か月前
5

和歌心日記 14 西行法師②

嘆けとて 月やは物を 思はする ***  あれは藤原晴家が10歳の時だった。  晴家は街の児…

函館次郎
4か月前
3

和歌心日記 14 西行法師①

嘆けとて 月やは物を 思はする  藤原晴家(ふじわら はれや)が彼女を初めて見たのは、彼の勤…

函館次郎
4か月前
5

和歌心日記 5 壬生忠岑

有明の つれなく見えし 別れより… 寒空の下、篝高道はとぼとぼと線路脇のいつもの帰り道を歩…

函館次郎
1年前
8

和歌心日記 3 在原業平朝臣

千早ぶる 神代もきかず 龍田川 あの人の傘は、 目の醒めるような、からくれなゐのような赤だ…

函館次郎
1年前
10

和歌心日記 2 参議等

浅茅生の 小野の篠原 しのぶれど 「そりゃ彼氏くらいいるわな」 山脇聡史はひとりごちた。 山…

函館次郎
1年前
7

和歌心日記 1 蝉丸

これやこの 行くも帰るも 別れては… 柏木浩人は東北新幹線の自由席の中から窓の外を眺めていた。 「しばらくお別れだな。この景色とも…もう来ることもないのか…」 3席並びの窓側に陣取る柏木の1席開けた通路側に妙齢の女性が座る。 幾分香水の匂いがキツいが悪い匂いではなかった。営業ウーマンだろうか。または、どこぞの会社の役員か。 柏木はその女性に向けた眼を再び窓外に戻す。 雪がほんのりと景色に蓋をしている。 もう少しで福島は新白河を迎えるところに差し掛かる。 「白河の関…だっけか