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和歌心日記

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百人一首から想像したストーリーを書き集めました。
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#小説

和歌心日記 14 西行法師③

嘆けとて 月やは物を 思はする ***  キリエと一日児童館で過ごした藤原晴家は、母と車で…

函館次郎
4か月前
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和歌心日記 11 藤原義孝

君がため 惜しからざりし いのちさへ…。 そいつは、いつも一人だった。 そのせいで気味悪が…

函館次郎
1年前
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和歌心日記 10 右近

忘らるる 身をば思はず ちかひてし…  まさか、そんなわけないよね。  入間愛子は、菊田明…

函館次郎
1年前
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和歌心日記 9 壬生忠見

恋すてふ 我が名はまだき 立ちにけり… 「ピアノ、好きなんですか?」 少し上気した顔で覗…

函館次郎
1年前
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和歌心日記 8 のニ 小野小町

花の色は うつりにけりな いたづらに 町子は、姉の絹子が働いている神社(それは自分の生まれ…

函館次郎
1年前
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和歌心日記 8 小野小町

花の色は うつりにけりな いたづらに… 「この辺りに電気屋さんはありませんか?」 6月のある…

函館次郎
1年前
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和歌心日記 7 入道前太政大臣

花さそふ 嵐の庭の 雪ならで… 「もう何回目の春だろう」 坂口智也は会社の窓から見下ろす桜並木を見ていた。 3月になると、毎年感じる焦燥感と、次に入ってくる若者たちの姿。そして、それを見たときに感じる絶望感。 年降るに連れ、その思いは益々強くなる。 「部長、そろそろ会議です」 「ああ、じゃ行こう」 次の会議は四半期に一度の部長会議。経営課題の優先順位をつける戦略会議、この優先順位の高さがそのまま部の予算や強さの象徴となる会議だ。 坂口は自分の部門を背負っているが、最近特

和歌心日記 6 崇徳院

瀬をはやみ 岩にわかるる 滝川の… 「いってらっしゃい」 「あぁ。ありがとう」 「ごめん。…

函館次郎
1年前
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和歌心日記 5 壬生忠岑

有明の つれなく見えし 別れより… 寒空の下、篝高道はとぼとぼと線路脇のいつもの帰り道を歩…

函館次郎
1年前
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和歌心日記 4 参議篁

わたの原 八十島かけて 漕ぎ出でぬと 「山手さん、ほんとに戻っちゃうんだべか?」 「そうな…

函館次郎
1年前
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和歌心日記 3 在原業平朝臣

千早ぶる 神代もきかず 龍田川 あの人の傘は、 目の醒めるような、からくれなゐのような赤だ…

函館次郎
1年前
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和歌心日記 2 参議等

浅茅生の 小野の篠原 しのぶれど 「そりゃ彼氏くらいいるわな」 山脇聡史はひとりごちた。 山…

函館次郎
1年前
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和歌心日記 1 蝉丸

これやこの 行くも帰るも 別れては… 柏木浩人は東北新幹線の自由席の中から窓の外を眺めてい…

函館次郎
1年前
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