和歌心日記 1 蝉丸
これやこの
行くも帰るも
別れては…
柏木浩人は東北新幹線の自由席の中から窓の外を眺めていた。
「しばらくお別れだな。この景色とも…もう来ることもないのか…」
3席並びの窓側に陣取る柏木の1席開けた通路側に妙齢の女性が座る。
幾分香水の匂いがキツいが悪い匂いではなかった。営業ウーマンだろうか。または、どこぞの会社の役員か。
柏木はその女性に向けた眼を再び窓外に戻す。
雪がほんのりと景色に蓋をしている。
もう少しで福島は新白河を迎えるところに差し掛かる。
「白河の関…だっけか