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長期の養育費不払いを時効にさせない ②

こんにちは、海苔子です。
強制執行を検討した人が最初にぶつかるのが漢字だらけの法律用語、そして数々の制度です。私も始めの頃は債権者と債務者を逆に使って笑われました。はずかしー。
新シリーズ【用語解説】では、調停調書正本トリロジーや債権差押命令申立書マニュアルに登場した法律用語や、聞いたこともなかった制度について解説します。第1回目は私が誤解していた時効について解説します。


時効の完成分を差し押さえてみたら

裁判所はツッコまない

私がまだ、自分の強制執行を考えていなかった数年前。
公正証書ホルダーだった友人が、時効期間の5年を大きく過ぎた分も含めて、不払い養育費の債権差押命令申立てをしました。私も書類集めを手伝いましたが、二人とも素人ゆえグダグダ。様々なトラブルを乗り越えてなんとか申立書を提出た末に、元夫と職場に債権差押命令が発令されました。無事に給料の手取り1/2が会社から振り込まれて、大成功と喜んでいたのですが、私は裁判所の命令が不思議に思えました。

「時効を迎えたはずの養育費について、なぜ裁判所はツッコまないんだ」

1年後。友人の元夫が「時効の援用」に気づき、裁判を起こしてしまいました。東京地方裁判所で開かれた裁判を傍聴しましたが、その後も揉めて第2審(東京高等裁判所)にまで持ち込まれました。結局はある方法での債務の承認が認められて、残りの養育費全額を支払え、と振り出しに。友人が勝ったのです。

でも、双方ともに弁護士費用がかかっていて、こんな無駄なことをするなら、弁護士費用を養育費に充てればいいのにと、友人はくやしがっていました。究極の無駄遣いです。元夫さんは法テラス利用だったので、税金も無駄遣いしていますね。

このケースはかなり珍しい、いえ、地獄の一例だと思いますので、今後レポートします。

時効の援用をしないと借金は消えないよ

(時効の援用)
第百四十五条 時効は、当事者(消滅時効にあっては、保証人、物上保証人、第三取得者その他権利の消滅について正当な利益を有する者を含む。)が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。

E-GOV 法令検索

援用とは法律用語で、自己の利益のためにある事実を提示し主張すること。
初めて聞く言葉でした。

時効の援用
は債権者からするといやな言葉です。
わかりやすくいうと、元夫が「10年を過ぎた分は時効が完成してるから、時効を援用する」と、私に知らせてきたとします。そうすると、時効が完成した期間の養育費は支払わなくてOKになる可能性があります。うまく丸め込んで債務の承認をさせるテクニックもあるようですが、慣れた人でないと難しいので冷静になって法律家に相談してください。

ですから、長期ほったらかしをしている方は、恐怖の時効マジックその4、時効の援用を使わせないように、時効期間ギリギリでも諦めずに元配偶者に「払ってくださーい」と内容証明で催告しましょうね。うまくいけば時効がリセットされます。

時効を完成させない

不払いが発生したら事務的に粛々と

  • 調書などを作成した裁判所から履行勧告や履行命令をしてもらいつつ、裁判所に不払いの記録を残す

  • 公正証書や離婚協議書ならネチネチと連絡して、支払いの意思を文字に残す

  • 1000円でもいいから支払わせ、受領日を記録

  • 内容証明郵便で催告書を送る

以上を試してみても支払が2か月分溜まったら、債権差押命令申立をおすすめします。養育費を払わない元配偶者は、私たちが泣き寝入りするのを心待ちにしているんです。グチをこぼしてる間に引っ越しされたり、転職されたりして、いざというときに最新情報を探すのに苦労します。

裁判になったら弁護士費用がかかります

養育費がなくても今までなんとかなってたからとか、時効があるのは知ってたけど気が進まなかった。そんな私たちみたいなのんびり屋さんと元夫たちは、強制執行したせいで、今も苦労しています。元夫の職場の会計課は毎月、給料の1/2を計算して法務局に供託する雑務が増えました。

それに、時効の完成に気づかれて援用されたらヤバイとか、調停調書正本を受け取ってもらえるのかとか、申立中も心労がハンパなかったです。

給料を差押えできても、時効の援用を知られて裁判に持ち込まれたら、せっかくの養育費が弁護士費用に化けます。裁判準備に時間が取られます。マジで無駄。

だから、

不払いが2か月を超えたら、躊躇なく法的措置を

傷は浅いうちに手当てしましょう。
自分のため、お子さんのためにもです。

地獄を目撃した海苔子からのお願いです。

不払い養育費に悩んでいる方への社会貢献として、私の実体験を包み隠さず重箱の隅をつつきながらお伝えしています。記事は無料で提供しておりますが、サポートしていただけますと幸甚に存じます。