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あさひを通して見る世界『サマー・ミーツ・ワンダーランド』
1.はじめに
本稿は2019年の夏に開催されたプロデュースイベント『サマー・ミーツ・ワンダーランド』について、筆者の脳内にて喧々諤々の論争の果てに立ち上がった、ただの感想文である。
『サマー・ミーツ・ワンダーランド』は先述の通り7月から8月につけて公開された、いわば「ひと夏の不思議な思い出」をフィーチャーした物語だ。
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当時の283プロダクション(イルミネーションスターズ・アンティーカ・放課後クライマックスガールズ・アルストロメリア・ストレイライト)全体での越境イベントで、個人とユニットを中心に進行していくシャイニーカラーズの中では少々異色なストーリーである。
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今でこそホーム画面での会話機能が追加されたものの、当時ユニット外でのコミュニケーションは越境イベント以外にほぼ無かったので、キャラ間での関係性を摂取するために、躍起になって読んだものである。
2.ざっくりとした設定
『サマー・ミーツ・ワンダーランド』では社長を除いた283プロダクション全員が、夏休みを利用して離島に3泊4日の旅行をする内容で進行する。
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各々好きなように離島でのレクリエーションを楽しむが、ストレイライト所属の芹沢あさひが海辺でボトルメールを拾ってから、物語は動き始める。
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こんにちは。お友達になりましょう
あなたは誰?
返信待ってます
(読めない文字:住所のような文字列)
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ボトルメールの中身には重要な部分が欠けていて、誰から送られて来たかわからない内容の文章だった。
一度は興味を示したものの住所の部分が欠けているメールを見て、同じくストレイライト所属の黛冬優子は関心を失う。
しかし、拾った当人のあさひはボトルメールの返事を書いて、海に流す。
わたしはあさひ
中学生とアイドルをやっています
あなたは誰ですか。一緒に遊びましょう!
翌日、あさひはイルミネーションスターズ所属の風野灯織、放課後クライマックスガールズ所属の小宮果穂を連れて、同じ場所でボトルメールを発見する。
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お返事ありがとう
一緒に遊べるの嬉しいな
今夜、あなたの前で待ち合わせ
離島での小旅行を各自思い思いに楽しむが、『サマー・ミーツ・ワンダーランド』での本筋――「ひと夏の不思議な思い出」は、主に数人の観点から描かれる。
3.主要登場人物
芹沢あさひ
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ストレイライト所属。好奇心の強い性格であり、興味を持ったものに対して常人離れした執着を見せる。関心のない事柄については一切眼中に無く、根気よく説明しないと中々聞かないタイプ。
小宮果穂
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放課後クライマックスガールズ所属。シャイニーカラーズの中でも最年少であり、12歳の小学六年生。特撮ヒーローが好きで快活な性格をしている。14のあさひとは歳が近いがしっかり者。
風野灯織
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イルミネーションスターズ所属。冷静で内向的な高校一年生。口下手ながらも面倒見が良く、今回は二人を見守る保護者役になっている。
4.「ひと夏の不思議な思い出」
夏には不思議な体験がつきもの――だという印象が、なぜだかある。これを読んでいる諸君らにも、おそらくそういったイメージがあるだろう。
そういった、限りなく平坦なイメージが蔓延っているのは、日本人たる生活ゆえか、文化ゆえか、遺伝子ゆえか。
私は、そもそも夏という季節にある種の郷愁を抱いている。みなさんも、そうであって欲しい。
日本には四季がある。気温や天気だけの話ではない。昨今では環境変動による世界的な異常気象もあいまって、夏と冬しか存在しないような気候が続いているが、そういった話ではないのだ。これはもっと、季節の文化的側面の話である。
ざっくりと、春は出会いと別れの季節である。桜のイメージが張り付いてピンクのイメージがあるが、陰陽五行思想で言うところの青。青春である。
秋は収穫の季節だ。食欲、読書の秋ともいうように、冬に向けたイメージが馴染み深い気がしている。実った作物や葉は役目を終えて、枯れてゆく。白秋である。
冬はもの悲しい季節だ。あれだけ花を咲かせていた木々は葉すら欠けて、ただただそこに立ち尽くしている。玄冬である。
くどくどと季節の印象について記述したが、では夏はどうか。
書き切れなくない?
夏という季節は、朱――朱夏とされている。
夏に対するイメージは思いつく限りでも、甲子園や花火、祭りに海水浴、盆、スイカ、蝉など。あまりにも多種多様が過ぎる。
上記に挙げたものはイベントなど具体的な事物であるが、夏に対する感情的な印象も、同様にして書き切れるものではない。
じゃあ、このツラツラと並んだ恥ずかしい文字列が、『サマー・ミーツ・ワンダーランド』と、一体どう関係しているというのか。アイドルマスターシャイニーカラーズは貴様にとってのなんなんだ、という問いが来るものとして、私は声を大にする。
『サマー・ミーツ・ワンダーランド』は我々が抱く、「夏」に対する解答を内包しているということだ。
不思議な体験――というのは、決まって夏に起きるものだ。
夏という季節は唐突にやってきて、一瞬の輝きを見せた刹那、郷愁に塗れて過ぎ去っていくものなのだと、私は覚えている。
五年前に読んだ『サマー・ミーツ・ワンダーランド』は、未だに私の深く奥で、ほのかに火を灯している。
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